No.67 1994年5月

「欧州諸国電気通信事業者の動向―経営財務状況を中心として―」

                           通信経済研究部研究官 藤原  実
1 本稿では、EC市場統合やネットワークのグローバル化が進展する中で激動する欧州諸国の電気通信事業者について、民営化の動向及び経営財務状況という枠組みの中で紹介する。

2 英国を除くほとんどの欧州諸国においては、国有企業による基本電話サービスの独占提供体制を堅持してきたが、EC市場の統合、民営化のもたらすメリット、技術革新を誘因として、いくつかの国々で民営化の動きが具体化している。

3 このような中で各国のネットワークの状況をみると、基本的な電話ネットワークが未整備な国々がある一方、ネットワークの近代化(ディジタル化)が課題の国々、更にはネットワーク整備及びディジタル化が進み新規事業への進出も可能な国々というように、大きな格差が見られる。したがって、今後の設備投資の方向も、ネットワークの整備状況に応じて分類される。

4 また、財務状況については、いち早く民営化した。BTがこれまで良好なパフォーマンスを残しているのに対して、大部分の電気通信事業者が自己資本を超える長期負債を抱えているほか、ネットワーク整備に多大な設備投資が必要なドイツ・イタリア・スペインの事業者などは今後も苦しい資金状況が続くものと予想される。

5 さらに、財政に大きな影響を与える料金問題については、利益の源泉とされてきた長距離・国際通話料金が大幅に低下してきており、また、1998年1月からの基本電話サービスへの競争導入に対処する意味からも、料金体系の改革(リバランシング)が必要になってきている。

6 このように欧州諸国電気通信事業者の現状は、EC市場統合等を背景に民営化の動きが活発化する中で、その財務状況は、BTなどを除き苦しい状況にあると言える。

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