No.74 1994年12月

「米国の情報通信基盤整備(その2)―整備に向けた州政府と事業者の動きを中心として―」

                               通信経済研究部研究官 浅井 澄子
1 クリントン・ゴア政権は、米国の情報通信基盤の整備に関して情報通信基盤行動アジェンダを発表するとともにタスクフォースを創設する等、多岐にわたって積極的姿勢を示している。このような基盤整備に対する連邦政府の役割は重要なものであるが、整備上の大きな課題は加入者回線の再構築であり、ここで役割を果たすものが、州公益事業委員会、州の行政府及び州議会である。州政府の情報通信基盤整備に対する考え方は州によって異なり、例えば料金規制を中心として事業者に投資インセンティブを付与する方策を採用している州、競争政策を推進することによって整備を促進する考え方を採用している州、一定の分野で州政府自らが整備主体になっている州がある。このような相違は、これまでの州政府の参入規制、競争に対する考え方、社会経済状況等の違いにより発生しているものと考えられる。州レベルの情報通信基盤整備の問題は、地域通信分野の競争、加入者回線の光ファイバ化の費用負担の問題として、今後、一層議論されるものと思われる。

2 連邦政府及び州政府の動きを受けて、この数年、長距離電話会社、地域電話会社、競争的アクセス事業者、移動体通信事業者、ケーブル・テレビジョン事業者等多岐にわたる事業者がネットワークの高度化計画を発表し、これら事業者は提携・合併に積極的な姿勢を示している。しかし、提携・合併には実現に向けての制度上の制約、合併自体のメリット・デメリット、両社の株価の推移等、冷静にとらえる必要がある要素も多い。

3 米国の情報通信政策は、我が国の政策を検討するに当たって参考になる点も多いが、ユニバーサル・サービスの背景、政策決定過程、インターネット等の米国に特徴的事項に拠るところもあり、両国の制度及びこれまでの経緯等の相違を認識して検討する必要がある。

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