78 1995年4月

『情報・通信メディアの機能とイメージ』

                         情報通信システム研究室研究官 國井 昭男
  1.  情報・通信メディアの機能・特性を技術的観点から説明するのは比較的容易であるが、ユーザが抱く機能・特性イメージは区々であり、そのギャップがしばしば新しいメディアの普及を阻害する要因となり得る。
  2.  ユーザの情報・通信メディアに対する機能・特性イメージは、メディアへの認知・接触行動を通じて形成されると考えられるが、認知・接触行動は性別・年代といったデモグラフィックな属性だけでなく、技術系のバックグラウンドをもつユーザであるか否かといった属性によっても影響されており、その傾向は「ファックス」「ボイスメール」「電子メール」などにおいて特に顕著である。
  3.  このような認知・接触行動を通じて形成された情報・通信メディアに対する機能・特性イメージは、「電話」「テレビ」などといった広く普及している情報・通信メディアについては本来得べきイメージが形成されイメージギャップが存在していないのに対して、「ファックス」「ボイスメール」「ビデオテックス」などといった“新しい”情報・通信メディアについては、イメージギャップが発生しているケースが見受けられ、しかも、技術系/非技術系で趣を異にしていることが指摘できる。
     このような中で、“新しい”情報・通信メディアでありながら、機能・特性イメージが既に十分に形成され、受容されている「電子メール」の存在は特筆されよう。
  4.  このような機能・特性イメージの形成を通じてユーザに受容された情報・通信メディアは、既存の情報・通信メディアとの代替によって、その存在価値を高めていくと考えられるが、「ファックス」「電子メール」は既に他の情報・通信メディアの受け皿としての能力を評価され、“ライフライン”に近づきつつあることがわかる。