81 1995年7月

『情報スーパーハイウェイの構築に向けてのEUにおける最近の取組』

                         情報通信システム研究室研究官 藤井 啓造
  1.  最初に電気通信インフラストラクチュア及び電気通信サービスに関して各国でどのような規制が存在しているかについて整理した。まず、電気通信事業者が各国で競争状態にあるかどうかについてであるが、イギリス、フィンランド、スウェーデンが競争状態にあり、他は独占である。電気通信事業者の活動における放送とマルチメディアサービスの提供についての規制では、アイルランド、フランス、フィンランド、スウェーデンが明確な規制はない。電気通信インフラストラクチュアを構築できる主体については、イギリス、フィンランド、スウェーデンで、2つ以上の電気通信事業者が電気通信インフラストラクチュアを提供できる。
  2.  欧州では、相互接続については、支配的地位の濫用を避ける必要があると指摘されている。支配的地位にある電気通信事業者は相互接続を拒むことによって、他の事業者のサービス提供を妨げてはならない。また、そのサービス選択に不当な制約を課したり、不当な料金を設定してはならないとするとともに、開放的な相互接続環境の設定のために現在の障壁を除去し、公正かつタイムリーな事業者間交渉を推進し、各国規制機関がそれを監視し、欧州連合レベルで共通原則を設定することとしている。免許については通信と放送の融合を踏まえた検討がなされている。すなわち、現在電気通信サービス提供のためのインフラストラクチュア利用の条件は、必須要件及び公衆サービス要件であるが、これが通信と放送の融合した形のサービスである場合は、放送の許認可を得たり、放送に関する条件の適用を受ける。
  3.  次にユニバーサルサービスのコスト算出に関しては、国内規制機関は非経済顧客へのサービス提供の正味コストに公衆電話、緊急サービス等のその他の社会的義務に関するコストを加えたものとする。ユニバーサルサービスの資金供与について、ユニバーサルサービスファンドによる方法とアクセスチャージによる方法が検討されている。ユニバーサルサービスファンドでは、電気通信事業者がそれぞれ資金を提供しあうことによって高コスト地域から低コスト地域への資金の移入が可能であり、結果的に負担を均等化できる。それに対してアクセスチャージでは、支配的事業者が自己の支出の一部を回収するなど利害が衝突する可能性がある。従ってユニバーサルサービスファンドを優先すべきであるとしている。
  4.  欧州連合では、1998年1月1日までに電気通信インフラストラクチュアを自由化する。また、これらの問題に取り組むにあたって、ローマ条約の規定に基づいた明確な規制の枠組み、効果的な独立の規制を設定する必要性をアピールしている。1996年1月1日までに欧州連合は規制の枠組みを拡張するための特定の措置案を公表する予定である。