87 1996年1月

『パーソナルユースが想定されるマルチメディアサービスに対するニーズ・意識』

                           通信通信システム研究室研究官 國井 昭男
  1.  NII構想を契機とした「マルチメディアブーム」は、通産省「高度情報化プログラム」が示唆するように、アプリケーションレベル/サービスレベルの議論が焦点となりつつある。ここでは、パーソナルユースが想定されるマルチメディアサービス(アプリケーション)に関して実施したアンケート調査の分析結果の一部を紹介する。主な知見は次のとおりである。
  2.  現時点における一般ユーザのマルチメディアサービスに対する認知度は低く、普及のためには、多くのユーザに関心を抱いてもらう工夫が必要である。また、マルチメディアサービスの先進的なユーザとしての役割が期待される層は、一般的なユーザとは相当異なるニーズ・意識を抱いており、概にマルチメディアサービスに対する関心が醸成されているので、市場を形成するトリガーとなるようなプロトタイプ的マルチメディアサービスの投入が求められよう。
  3.  市場にマルチメディアサービスの需要を喚起するためには、需要喚起力のある機能を具備したマルチメディアサービスを投入する必要があるが、これらの機能と、多くのユーザが関心を示す機能は必ずしも一致しない可能性があり、その需要喚起力のあるマルチメディアサービスの機能は、主として「オンデマンド性」と「情報の詳細さ」に集約されており、多くのユーザは、出力情報の映像化などといった、既存サービスの”マルチメディア化”を期待しているわけではなく、むしろ、既存サービスの不足機能の補完を求めていることを認識すべきである。
  4.  マルチメディアサービスの普及のためには、従来の新商品・サービスの普及過程と同様に、認知の形成から始まる地道な段階的プロセスを経る必要がある。現段階では必ずしもマルチメディアサービスに対して受容的でないユーザ層も、本質的な拒絶層ではなく、むしろ、長期的な視点でのターゲットユーザとして認識できる。そのためにも、マルチメディアに対する社会的・個人的な懸念を払拭するような努力が、マルチメディアサービスの提供者側に求められる。