No.91 1996年4月

米国電気通信産業の変化−地域通信市場を中心に−

                           通信経済研究部主任研究官 柳澤 和子

 司法省による反トラスト訴訟の結果として、1984年、AT&T長距離部門とベル電話会社は分離され、地域通信は7つに再編成されたベル電話会社(RBOC)に委ねられた。これを期に、米国電気通信市場は依然としてRBOCをはじめとする地域電話会社による地域独占が続いてきた。
 本稿は、AT&T分割以降の地域通信市場の動向に焦点をあて、その変化の跡をたどると共に、今年2月に成立した米国通信法の改正立法である1996年電気通信法がもたらす地域通信分野への影響を概括した。

  1.  いわゆる「ボトルネック独占」は、一つの地域通信市場に複数の地域電話会社が存在しても、それぞれに顧客(エンドユーザー)を持っていれば、それにアクセスしようとする長距離事業者にとってはボトルネックの存在に変わりはない。地域の競争はボトルネックの存在を根本的になくすまでに至らないまでも、円滑な相互接続、サービスをアンバンドル化等により、その存在を意識せずにサービス展開できる環境を作り出すことができる。

  2.  地域通信市場は、CAPの登場を発端として政策サイドからの競争導入が進められようとしている。その展開は、州によってバラつきがみられるものの、方向としては競争促進を目指している。先駆的な例はニューヨーク州、イリノイ州、カリフォルニア州などに見られる。

  3.  地域通信への競争導入にあたっては、(1)競争を阻害する障壁の除去、(2)公正な競争の確保、(3)消費者保護、等の方針に従い、(1)相互接続、(2)サービスのアンバンドリング、(3)ユニバーサル・サービス、(4)番号のポータビリティ、(5)料金規制、等々についてルール作りを進めていかなければならない。

  4.  通信法改正によって、以上のような地域の競争政策が一元化され、よりダイナミックな競争の実現が予想され、通信法改正はAT&T分割を主軸とした一連の改革に続く、第二次通信改革とも言える。

  5.  競争の促進により、ネットワーク等インフラの強化、利用者のサービスの選択の幅が広がるなど、通信法の主眼である「公共の利益」がもたらされる。