No.97 1996年10月

接続におけるインセンティブ規制

                                        通信経済研究部      浅井 澄子

本稿は、米国の長距離通信事業者が地域電話会社と接続する際に適用されているインセンティブ規制の有効性を考察することを目的とする。
料金に関する主要なインセンティブ規制としては、プライスキャップ規制、ヤードスティック方式、利潤配分方式(profit-sharing)及びこれらの組合わせ方式(以下、「ハイブリッド方式」という。)がある。これら方式の経済厚生に与える影響、現実への適用可能性及び規制コストはそれぞれの方式の具体的設計により異なるが、これまでに適用されている州内通話料金に対するインセンティブ規制の成果は、研究によりその評価が分かれており、必ずしも現時点で良好な成績を収めていると判断することは時期尚早である。
長距離通信事業者が地域電話会社と接続する際の規制に関しては、プライスキャップ規制と報酬率を利用した利潤配分方式が併用されている。これは、費用削減インセンティブを付与する一方、費用条件、需要条件の異なる地域電話会社に一律の生産性向上率Xを課することによる不適正性を是正することを意図している。しかし、この方式は、本来の費用削減インセンティブ効果を減退させる一方、規制コストを増大させる欠点を有する。さらに、規制方式がハイブリッド方式で複雑なものとなっており、規制の効果を判断することを一層困難にしている。
接続に有する規制は、地域通信市場が独占的市場であるとの認識の下で、当該事業者に対し費用削減及び新規投資等を誘導することを意図している。しかし、1996年電気通信法の制定により地域通信市場においても競争促進政策が明記されたこと、今後、多様な接続形態が想定されることを考慮すると、今回の規制を接続における規制全般から捉え直し、見直すことが必要である。