No.98 1996年11月

接続料金の基本的考え方

                         通信経済研究部     浅井 澄子

本稿は、米国及び英国における接続料金の議論を踏まえ、その基本的考え方と含意を整理することを目的とする。接続料金は、これまで会計情報を利用し、関係者の議論を踏まえ設定されてきたが、その適正性には従前から疑問が呈示されており、現在、方式の見直しが行われている。会計情報を利用した完全費用配賦方式による接続料金設定の代替案として、単独採算費用を上限、増分費用を下限とする料金幅の設定方式、長期増分費用に基づく算定方式、ラムゼイ・ルールによる方式、Efficient Component-Pricing Rule(以下、「ECPR」という。)等が挙げられる。
米国及び英国では、接続料金を過去の費用情報に基づかない将来的費用(forward-looking cost)で算定することが決定あるいは提案されている。接続料金については、これが最終利用者向け料金と事業者の競争条件に影響を与えることから、資源配分の効率性、競争条件の公平性、規制コストと実現可能性等、多角的な見地から検討する必要がある。今回決定又は提案された方式は、現行方式に比べ優れている点はあるが、現実面では長期増分費用の算定方法、将来的費用及び共通費用の把握方法、配賦基準の決定等、運用上の課題が残されている。
今回の方針は、従来の実務的観点から経済原則に基づく接続料金の設定に軌道修正するものであるが、これまでの費用情報の蓄積情報から、これが規制方式として定着するには一定の時間と規制コストを要すると考えられる。しかし、適正な接続料金の設定は、電気通信市場の競争促進に不可欠であり、このための規制コストは、競争市場の創出のためのコストでもある。接続料金設定方式の基本的考え方と運用上との問題とは区別し、費用情報の改善を図りつつ、基本的方針を実施することが必要であり、一旦設定された接続料金についても適宜、見直しを行い、長期的に改善を図ることが不可欠である。