No.98 1996年11月

災害時における情報伝達のあり方と最近の取り組み

                      情報通信システム研究室      姫野 桂一

1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、神戸市、芦屋市、西宮市等の被災地においては、情報の隔絶、情報発信の不能によって、初動体制が遅れ、結果的に被害が拡大したと言われている。
郵政研究所では、阪神・淡路大震災直後より被災者が必要とした情報、メディアが提供した情報を整理し、災害時における地域メディアのあり方、活用方策等について調査研究を行ってきた。
その調査研究の過程では、災害発生直後から時間が経過するのに伴い、被災者の必要とした情報のニーズが変化していったことが明らかになった。したがって、災害発生時においては、被災者に対する情報伝達手段としては、テレビ放送、新聞、雑誌等の全国を対象としたメディアより、むしろ地域密着型のラジオ放送、コミュニティ放送、CATV等のメディアが有効であると言える。また、パソコンネットワークも災害時における情報伝達手段としては、将来性の高いメディアと言える。これらのメディアは、災害時において地域住民に対し、基幹的な情報提供手段となる同報無線等の機能を補完する役割も期待される。
阪神・淡路大震災以降、全国的に災害時の情報伝達に関するインフラのさらなる整備が進展しているが、行政機関以外組織による情報収集については、体系的な方法が未だ確立されてはいないため、より詳細な検討が必要になっている。
本稿では、災害時の情報提供にコミュニティ放送を活用している事例として、神奈川県藤沢市のケースと新潟県新津市のケースを採り上げた。
こうしたコミュニティ放送による情報伝達も、それ単独では効果が十分に発揮できないと考えられるため、防災行政無線等の他のメディアと相互に連携させながら、活用させていくことが重要である。また、災害時におけるこれらの情報収集、伝達のシステムについても、全国一律に整備するのではなく、地域の特性、実情に即して整備していくことが必要である。