ユーザ指向のアプリケーション

通信経済研究部主任研究官 宮田 拓司

1.はじめに

 「アプリケーション」という言葉は実に曖昧な用語であり、定義そのものは容易でも、いざ分類を行おうとすると迷路に入り込んでしまう言葉のように思われる。従って、ここでは「アプリケーション」の対象を全ての通信・放送サービスまで拡大解釈し述べて行くことにする。
 これまで、そして現在も数多くの「アプリケーション」の開発が行われ、実用化されてきているが、これらの対象は圧倒的にビジネス用のものが多い。
 2010年FTTHの時代、情報通信革命とも言えるこの大改革、ビジネス用を始め、多くの大衆に受け入れられる「アプリケーション」の充実なくして、この新しい時代を迎えることはありえない。
 これまで以上に期待される「アプリケーション」群の登場には何が必要なのか?大衆を対象とする「ユーザ指向のアプリケーション」には何が必要なのか?について考えて行きたい。


2.ユーザの分類

 「ユーザ指向のアプリケーション」について述べて行く前に、まず、その対象となる「ユーザ」について整理しておく必要がある。
 大まかな分類指針として、関心度、実行力、経済力の3点に注目し、以下のとおり分類してみる。

a)積極的マルチメディアタイプ
 マルチ・メディアに関して非常に興味を持ち、貪欲に学習し、実際に体験し自分のものとしたいという強い要求を持ち、経済力も高い(情報通信関連の投資を積極的に行う)傾向の人々。機器及びソフトウェアのバージョンアップ情報等にも敏感で、積極的に情報通信機器の更新を行う。その住まいには、BSアンテナに加え、CSアナログ放送用のアンテナ2本の計3本のパラボラ群を備え、ISDN回線を引き、高速パソコン通信の体制を整えている。最近、CSデジタル放送用のパラボラを追加した。マルチメディアのためなら、住まいの改造まで行う、高度情報化時代の牽引車的存在。

b)マルチメディアタイプ
 情報処理関連に興味を持ち、より理解を深めたいという要求を持ち実際に機器の調達も行うが、関係の投資に関しては必要最低限とし、より厳選した投資を行う傾向の人々。機器及びソフトウェアのバージョンアップ情報等にも敏感であるが、投資価値の評価の後、機器の購入等行う。パソコン通信は、既存の電話回線を活用し、BS及びCSの受信に関してはパラボラアンテナの数にこだわり、モータ駆動方式のパラボラ1本でBSとCSをまかなう。最近の情報化社会の中核的存在。

c)OA化順応タイプ
 別に情報処理関連に興味を持っている訳ではないが、情報処理機器等に対する順応性は高く、職場において業務上必要とされるものについては十分対応できる傾向の人。機器購入等に関しては特にこだわりは無く、必要と思われるものは悩みながらも購入する。BS受信機器は備えるが、CSまでは?

d)OA化挫折タイプ
 情報化という社会の流れには関心があるが、その内容はあまり興味の対象とはなっておらず、機能を追い求めることはないが、入門的投資には寛容である傾向の人々。高価なパソコンは購入したが、単なるゲーム機としてのみの存在となってしまう傾向がある。情報通信機器への投資は比較的寛容で携帯電話等簡易な操作の機器は離せない。仕事関係からの情報通信入門者に多く、中年以降の主流か?

e)知識のみ先行タイプ
 情報通信関係の情報には非常に興味を持ち、関係情報誌等から入手した情報量は専門家に匹敵するが、経済的理由から機器の購入等は殆ど行わない傾向の人々。実践を伴わない知識選考であるため、説得力は無いが、将来のマルチメディア時代の主役になる可能性がある。まじめな学生に多い?

f)モード・トレンド順応タイプ
 情報通信に関する興味は特にあるわけでもないが、いわゆる専門家の言うことを良く信じ、また、デモンストレーション効果の影響を強く受け、情報通信機器の投資についても問題なく積極的に実行する傾向の人々。設備は備えるがその機能を全て使いこなすことは無い。また、情報通信の必要性そのものを特に否定する訳でもない。

g)保守タイプ
 情報通信等に関する興味等一切持たない傾向の人々。ラジオとテレビと黒電話があれば十分、それ以上は必要ないと考えている。(おそらく、全人口比では、現状では最も多いタイプでは?)

 以上、情報通信に関連し身近にいる人々をモデル化してみた。


3.これまでの「アプリケーション」

 これまで開発されてきた「アプリケーション」の対象の中心は、ビジネス用の情報処理機器であり、これは情報化がまだそれほど進んでいない時代でも、業務の効率化・生産性の向上を目的とした商品であり、最も投資が期待できる(売れ筋の)分野であったことが主な原因であったと言える。

a)情報処理の「アプリケーション」
 いわゆるOA化が始まった頃から、現在に至るまで、「これからは、コンピュータを使えない人間は会社で生きて行けない」と言われてきた。これは、ユーザーを無視したハード・ウェア中心の考え方・思想である。しかしながら、この考え方に対応できない多数の人々の顕在化は、情報化社会の最初の大きな壁として情報処理機器提供者達の前に立ちはだかった。OA化の普及と共にマン・マシン・インタフェースの問題は大きく捉えられ、ハード・ウェア及びソフト・ウェアの両面から様々な工夫が行われ現在に至っている。プラグ・アンド・プレイによる機器の接続の簡易化、アイコンによる親しみやすい表示、マウスによる簡易な操作等に代表される情報処理機器提供者からのアプローチと、仕事における必要性から強制されるユーザの努力の両者の歩み寄りの成果なのだろうか?最近は、マン・マシン・インタフェースの問題は、一時程話題に上らなくなってきている。

b)電気通信の「アプリケーション」
 電気通信は、その登場が緊急通報の手段の必要性から生まれたことから、その機器操作は厳密に定められた手順により行われ、その操作には専門的知識を必要とし、操作資格等も設けられているものもあるほど厳格な世界である。
 また、電気通信とは「情報を流すパイプ」であるという観点に立てば、これまでの「アプリケーション」は、対ユーザでは基本サービスを簡易な操作で可能となるように提供してきており、機能的な「アプリケーション」については、むしろサービス提供者側のオペレーションに関するものが多数開発・実用化され技術進歩が進められた分野であるといえる。もちろん、電話を例に挙げれば、プッシュホン回線の導入により留守番電話機能、短縮ダイヤル及び数値計算等、個別契約に基づく「アプリケーション」の提供が行われてきたが、最近は端末等の機能向上・普及により、一部メニューは廃止(もっとも現在継続されている短縮ダイヤルサービスについても、私は、私の周囲で使用している人を知らない)に至っており、最近の傾向としては料金の割引等に関するメニュウ及び伝言ダイヤル等端末のみでは再現が難しい「アプリケーション」へ移行してきている。
 電気通信における、現在の一つの大きな流れは、これまでの個々の基本サービスを統合し、一つのサービス(の「アプリケーション」)として提供しようとするもの、いわゆる統合デジタルネットワーク(ISDN)の移行が開始されたことである。
 これは、それまで通信事業者が自らの設備(交換機)で制御してきた各種機能の一部(アナログ音声のデジタル変換や共通線信号方式によるチャネル制御等)をユーザに解放することで、回線制御の一部を新たにユーザ端末の負担とすると同時に、その利用に関するユーザの自由度を向上させたものである。難しい通信回線の管理・制御を、情報処理機器と電気通信機器との融合により高度化された端末の能力向上に基づいて、ユーザへ引き継いだものとなっている。
 端末機器の高度化によりネットワーク機能の分散が進められ、その「アプリケーション」は、ネットワークシステム構成機器・装置の機能から端末機能へと期待が移って行く時期にきている。

c)放送の「アプリケーション」
 放送は、上記の情報処理及び電気通信と大きく異なり、ビジネス用「アプリケーション」(番組)は、殆ど無い。全ての「アプリケーション」は、ユーザ(一般視聴者)を対象に作成され、放送されてきた。また、この分野は一方向性のサービスであることからも、ユーザに優しく、大衆の日常生活から切り離せなくなってきているものも多いように思われる。ニュース、天気予報、交通情報などは、他の分野の「アプリケーション」とは一線を画すものとして位置付けられる。
 これまで、放送の分野では、番組以外の「アプリケーション」として、音声多重放送、ステレオ放送、文字放送、ファクシミリ放送、データ放送等、電波の空きを利用することを主眼に、様々なサービスの開発・実用化がなされている。しかしながら、これらの「アプリケーション」は、その都度ユーザ側で専用受信機を必要とする等、新規「アプリケーション」=新規設備投資の要求という関係が恒に発生してきたように思われる。操作が簡単な分、常に新しい機器の購入がなされてきた。また、最近の傾向としては、デジタル化による多チャンネル化が進められており、これもまた、新しい受信設備の購入が必須となる流れである。放送のデジタル化は、今のところその主目的は放送用周波数の効率的使用による多チャネル化であり、一部データ放送の拡充が行われる以外には、一般ユーザの立場からは、放送チャネルが増える(「アプリケーション」の選択肢が増える)ことであり、デジタルかアナログかはさほど影響はない話のように思われる。


4.FTTHの時代の「アプリケーション」

 FTTHの時代、各家庭まで大容量回線が伸び、各種「アプリケーション」の実現のためのネットワーク側(通信回線容量)の限界は、問題にならなくなる。また、各家庭へ接続される大容量回線に加え、これまで放送で用いられてきた衛星系や地上系の伝送路を合わせることにより、「情報が流れるパイプ」の大きさ・容量的問題は完全に解決されることになる。
 では、その時に期待される大量の「ユーザ指向のアプリケーション」の登場には何が必要なのだろうか?現在、話題になっている電子マネー、インターネット等、各種「アプリケーション」のハード・ウェアやその機能等については、プロの解説書にまかせることにして、以下では「ユーザ指向」という観点から、その登場に必要な条件等について考えて行きたい。

a)対象ユーザの傾向が変わる?
 3で述べたとおり、これまでの「アプリケーション」は、ビジネス用途が目的の情報処理機器用のものが中心であったと思われる。これらの「アプリケーション」は、機器中心の設計からマン・マシン・インタフェースを意識した「優しい設計」へ移ってきており、かなり改善が進められてきている。しかしながら、この対象となっているユーザは、ビジネスにおいて使用するという半強制的な特殊な条件が課せられている人たちである。ユーザの分類ではa)「マルチ・メディオくん、マルチ・メディコさんタイプ」〜c)「仕事ですから!タイプ」又はd)「ゲムオくん、ゲムコさんタイプ」までを対象としており、一般大衆を基本に考えた場合、多数の割合を占めるその他のタイプのユーザの使用については、殆ど考慮されてきていないと思われる。
 これからの「アプリケーション」の対象は、これまでのビジネス用に加え、ユーザの分類におけるe)「立ち読みくんタイプ」からg)「何も必要ないタイプ」までをも含めた全てのタイプのユーザの使用を対象にする必要が高くなってくる。

b)新しい「対応」の必要性
 対象ユーザの傾向がこれまで以上に拡大し、全てのタイプのユーザを対象とする場合へ変化するとき、ユーザと情報通信の関係は、その原点に帰り、導入に関する最初の条件から検討し直す必要が生じる。それほど結びつきが強くない(と思われる)2つをつなげるとき、その出会い・第一印象はその後について大きな影響を与える重要な要素である。まずは、情報通信の導入時の在り方から考えてみる。

I)導入段階の問題点(回線の確保)
 通信に係わる費用について、最も話題に上るのは通信料金、その次に端末の価格があり、初期の回線確保のための費用が話題に上ることは殆ど無い。
 しかしながら、最近のPHSや携帯電話の大ヒットには、1円端末等に代表される機器の大幅値引き(利用開始時点での費用の低廉化)が大きく貢献していることは間違いない。
 FTTHへの移行期には、現状において各家庭にある電話線が光ケーブルへと置き換えられる工事が全国的に展開される必要が生じてくるのだろうか?このとき、各ユーザの対応はどうなるのだろうか?
 私事で恐縮だが、私はこの9年間で6回転居した。学生から社会人、結婚、公務員宿舎への入居、転勤、転勤、宿舎の転居命令によるものである。この6回の転居で面白いことに気が付いた。同じ生活インフラと考えていた電気と電話でかかる経費が全く異なっていることだ。私の記憶が正しければ、6回の引っ越しのうち、単に電話を使用するだけなのに、NTTに対して4回工事費なるものを支払っている。一方、電気に関しては契約容量の変更を伴う工事を4回行っているが、一度も工事費なるものを請求されたことはない。両者のユーザ窓口の説明は以下のとおり、「電話の契約は対個人。また、NTTの設備は各家庭の保安器までであり、そこから先は契約者の負担で整備する。従って、借家か持ち家かに係わらず、契約者の負担となる。偶然、前の住人が整備した屋内回線を使用できる場合は工事費は必要ない場合もあるが、運の悪い方は転居の度に工事費が必要になることもある。」(オレンジライン)、「持ち家でも借家でも、住居内の電気配線工事については、東京電力への申請・承認が必要。承認された家屋では、契約者が誰であろうと配線の変更を行わない限り使用できる。契約変更に伴うブレーカー等設備の変更は、これらの設備が東京電力の所有設備であることから、設備費及び工事費は必要ない。(エコーライン)」。同じ生活インフラの提供者であると思っていたこの2つの対応の差は、どのような影響を生むのだろうか?
 我が国の持ち家率は、約60%(1993年データ、国民生活白書)である。既存の電話線から光ファイバーへの移行に際して、この屋内配線工事はどのように扱われるのだろうか?現状の負担制度のままで進むのであれば、特に借家に住む全体の約4割の世帯のうち何世帯が、借家内の大規模工事費用負担を行うであろうか?ユーザの分類によれば、a)の「マルチ・メディオくん、マルチ・メディコさんタイプ」とf)「家にはあるけど、どう使うかわからないわ?タイプ」の一部の人々しか対応しないのではないだろうか?
 導入段階の問題点としてはもう一つ、現状では最も広いユーザに多様な「アプリケーション」を多数提供している放送の、衛星系の直接受信に関する問題も取り上げておく必要がある。いわゆるアンテナの問題である。現在の衛星系放送はBS用1、CS(アナログ)用2、CS(デジタル)用1の計4衛星で運用されている。すなわち最大で4つのアンテナを必要とする状況にある。このアンテナの設置については、ベランダ(既存の設置場所の90%はベランダ)等に全て設置するのは不可能(スペースの問題、方向の問題等物理的なものがかなり大きいと思われる)であり、集合住宅の共用アンテナ設置に関する住民組合での否決問題等、日本の住宅事情を考慮すれば、既存の受信契約者数増加の大きな妨げになっていることは間違いない。
 以上、導入段階における回線確保のための問題として述べたものはほんの一例であり、まだまだ多くの問題があると思われる。これらの解決には、既存設備の活用を可能とする又は低負担で実現可能とする新技術の開発・実用化(例示では、xDSL技術、無線加入者線技術、マルチアンテナ技術等)及びユーザ・サービスの向上(端末までの回線及び共同アンテナ等の無償提供、CATVサービスエリアの拡充等)の必要性が高い。技術・制度の両面での支援を充実させ、それほど関心のないユーザでも気軽に入門できる環境整備を行う必要がある。

II)導入段階の問題点(端末)
 電気通信における「アプリケーション」は、既に述べたとおり、ネットワークから端末へその中心が移ってきている。情報処理端末と電気通信端末の融合が始まり、それが電気通信における「アプリケーション」提供の主役になりつつある現在、全てのユーザに対して受け入れられる端末とはどのようなものであろうか?
 最近のパーソナル・コンピュータの機能進歩は驚くべき速度で進んでいる。1年後の性能対価格比を考えた場合、端末価値の実質的大幅減少は、その価格が高価であることからも、個人購入の際に、二の足を踏んでしまう原因になり、多くのユーザが模様眺めの状態にあることが容易に想像できる。
 情報通信への入門段階のユーザが、将来的にも、このような状況で端末を購入することを前提とすると、これによりユーザが抱く失望感の伝染が、情報通信普及の足枷に成る恐れが極めて大きい。では、端末のあるべき姿とはどのようなものであろうか?現代のノード型コンピュータの登場のように、ネットワーク上に存在するサービス事業者が管理する大型情報処理・通信端末に接続し、処理することを前提とした簡易な端末の開発が必要ではないのだろうか?機能のバージン・アップは事業者の設備のみで対応することになれば、前述したユーザの失望感は生じないものとなる。
 その場合、サービス事業者によらない共通端末の確保のため、強力な標準化が行われなければ、利便性の向上及び端末の低価格化は期待できない。
 それとも2010年までには、技術進歩も飽和期を迎え、まさに各ユーザの期待する「アプリケーション」の再現を可能とする究極の高機能端末が実用化されているのだろうか?
 端末機器の経済性と「アプリケーション」の経済性の比較になるだろうこの2つの流れは、今後の技術開発動向を見極めながら入門ユーザを導いて行く際に重要な分岐点になると考えられる。

III)マン・ソフト・インタフェース
 マン・マシン・インタフェースの問題は、これまでにも重視され、様々な検討が行われ、各種の改善が行われてきている。現状でもかなり高度化されてきた文字認識、音声認識技術は、今後さらに機能向上が進められ、キーボード・アレルギーへの特効薬となって行くだろう。
 導入段階の回線及び端末の問題が解決され、マン・マシン・インタフェースの機能向上も十分に図られたとき、情報通信に関心を持たない人々が障害に感じるものがあるとしたら、それは、各種専門用語の問題ではないだろうか? これは、情報通信の問題に限らず、特に学問等、それだけで小さな世界を形成するものに共通しているように思える。
 直接指導してくれる先生と対話形式で進める学習は、個人で本や資料を調べながら行う学習より数段上の理解を短時間で与えてくれることが多い。これは、個人個人の特性を考慮した指導がなされることに加え、専門用語の理解が容易に行えることも大きな要素である。各事象・現象の効率的理解・表現のために設けられる各種専門用語は、その分野の知識を持たないものには逆に大きな障害となる。具体的な説明を受ければ簡単に理解できることでも、専門用語が大きな障害になり理解を妨げていることも多い。
 最近の情報処理端末、通信機器端末及びその「アプリケーション」等は、機能の高度化が進む程にマニュアルが厚くなり、専門用語の山となり、この用語の難しさ、マニュアルの分量が、情報通信への入門の大きな障害の一つになっている。
 これまで用語の解説に関しての「アプリケーション」としては、和英・英和の翻訳ソフト程度しか本格的なものは開発されていないのではないだろうか?専門用語の辞書的ソフトはあっても、各分野についての処理作業を進めているときに、作業内容にそった翻訳・説明を行ってくれる「アプリケーション」(マン・ソフト・インタフェース)はまだ開発されていない。
 情報通信を始め、多種多様の分野において、このようなマン・ソフト・インタフェースが提供されれば、情報通信機器の快適な操作が可能となるばかりでなく、多種多様な各分野の内容の理解も深まり、生涯学習支援の意味での「情報」獲得への興味・関心を大きく向上させる相乗効果も大きく期待できる。


まとめ

 以上、「ユーザ指向のアプリケーション」というテーマで、具体的な「アプリケーション」の内容には殆ど触れず、FTTHへの時代の変革期に必須となるユーザ層の拡大とその取り込みの必要性に触れることにより「アプリケーション」を「ユーザ指向のアプリケーション」へ近づける方策の一例を述べてきたつもりである。
 現在、マスコミ等で取り上げられているパーソナル・コンピュータの普及やインターネットブーム等の対象ユーザは、2010年のFTTHの実現に伴う情報通信改革の対象となる全てのタイプのユーザとは比較にならないほどの少数派ではないだろうか?
 2010年までは、まだ十数年ある。今後、ページャー、PHS等のユーザの主役となり、ファミリーコンピュータ等から情報処理機器に入門し、これらの機器にあまり抵抗を持たない世代が、社会の中核に入り込んでくる。その一方で、社会の高齢化により、情報通信機器にあまり興味を持っていなかった世代の人々も引き続き大きな存在力を持ち続ける。
 従って、これらの問題の解決は現状でも情報通信の普及に貢献する重要性を持っていることから、また、将来的に情報通信にあまり関心を持たないユーザを含め全てのユーザが参加し、情報通信改革を成功裏に達成するために無くてはならないものであり、かつ、かなりの時間を要するものであることから、今後の重点課題の一つとして位置付ける必要は大きいのではないだろうか?