インターネットによる中小企業の
ニーズ解決策の一考察
情報通信システム研究室主任研究官 井手 修
要約
昨年来のインターネットの話題は、今年になって多少なりとも落ち着きを取り戻してきたとも思える。これは、既に日本でも浸透しつくし、ニュース・バリューとしての価値がなくなったと見るべきか、それとも、インターネットの現状の利用方法の限界が露呈したと見るべきなのか、意見の分かれるところであろう。そのためか、企業は、外部とのコミュニケーション・ツールとしてのインターネットの利用から、内部のコミュニケーションやグループウェアの利用としてのイントラネットに関心が移っているように、見受けられる。
そこで、本報告書では、まずインターネットの情報発信としての利用、オンライン・ショッピングとしての利用、企業間取引としての利用の、それぞれの可能性と限界を検証してみる。
一方、インターネットは、比較的簡単に導入でき、外部とのネットワークとも容易にコミュニケートできる情報手段であるため、インターネットは中小企業の情報化にとって有効な手段となりうる。しかし、インターネット自体、多種多様な利用方法があるため、事業に応用しても、かえって使い方が散漫になり、効果が出ない結果となりがちである。また、インターネットを導入する意志はあっても、先進的な中小企業を除き、大部分の中小企業は、日々の事業に忙殺され、資金力不足、労働力不足、情報リテラシーの問題等があり、個々の中小企業単独では、インターネットを導入できないのがほとんどであろう。
そこで、本報告書では、上記中小企業の問題点を考慮しつつ、中小企業のニーズを解決するための一手段として、インターネットを利用したエージェント・サービス構想を提示する。
このエージェント・サービスは、
(1)ニーズ側、(2)シーズ側、(3)有機的にネットワーク化された専門家
をネットワークとして持ち、
(1)エージェント機能、(2)知的資源、(3)コーディネート機能
によって構成される。
また、エージェント・サービスの特徴は、
(1)中小企業の信用を醸成し、(2)ルーズな結合を有効に使い、(3)コーディネートとアシスト
を基本とするものである。
このエージェント・サービス構想が、内向きには、中小企業の事業が活発化し、その中小企業が所在する地域の産業が活性化すると同時に、外向きには、全国的、全世界的ネットワークと発展することを望むものである。
はじめに
いわゆるバブル経済の崩壊以降、国内産業界は、取引量の減少、価格破壊、円高等により、売上げ不振にあえいでいる。また、規制緩和、海外直接投資・海外現地生産、系列関係の弛緩化等、産業構造の変化にも晒されている。特に資本力、組織力が大企業に比べて小さい中小企業にとっては、「じっと耐えて変化をやり過ごす」という従来型の一時待避的な姿勢では対応できない状況である。
中小企業がこのような環境のもとで生き残るためには、業務の合理化、情報化の他、経営戦略の強化を行うことが必要であり、そのためには、同業者、市場、異業種業界等とのネットワークを強化し、外部環境の変化を読み取り、将来に向けて社内改革、事業拡大、ひいては事業転換に向けての内部構造の改革を行う必要がある。
一方、インターネットは、比較的簡単に導入でき、外部とのネットワークとも容易にコミュニケートできる情報手段である。そのためインターネットは中小企業の情報化、ネットワーク化にとって有効な手段となりうるであろう。
しかし、インターネット自体、多種多様な事に利用できるため、事業に応用しても、かえって使い方が散漫になり、効果が出ないこととなる。
また、インターネットを導入する意志はあっても、先進的な中小企業を除き、大部分の中小企業は、日々の事業に忙殺され、資金力不足、労働力不足、情報リテラシーの問題等があり、個々の中小企業単独では、インターネットを導入できないのが現状である。
そこで、本稿では、中小企業の事業を支援する方策として、インターネットを利用した中小企業向けエージェント・サービス構想を提案する。
郵政省が平成7年9月から10月にかけて行った「平成7年度通信利用動向調査」(郵政省大臣官房財務部企画課統計企画室)によると、インターネットの利用状況については、図表1に示すように、企業の1割が何らかの形でインターネットを利用している。また、2割近くの企業が、今後具体的な利用予定がある、と答えている。
ところが図表2に示すように、インターネットを実際に利用している企業のうち、活用状況をみると、
通常、企業が情報化システムを導入する場合、業務の合理化や、コストダウン等の目的を持っているが、ことインターネットに関しては、企業としても、どのように活用していいのか分からないのが実態であろう。また、インターネットの活用による効果についても懐疑的な意見もあり、そのため、インターネットは、以前のように騒がれてはおらず、現在は業務の合理化や、社内コミュニケーション等を目的として、インターネットの仕様を社内システムに応用したイントラネットに関心が移っている。
図表1 インターネットの利用状況【企業】
図表2 インターネットの活用状況【企業】
2.インターネットの可能性と限界
2.1 情報発信としての可能性と限界
インターネットを利用して情報発信を行う手段として、もっとも普及してい方法は、図表2でも示すように、「WWWサーバ等を設置して情報提供、宣伝媒体として利用」する方法である。ただし、設置しただけでは外部からはアクセスされる機会はほとんどなく、自WWWサーバの存在を対外に知らしめるため、新聞・雑誌での広報の他、著名なディレクトリ・サーバに登録することが一般的である。
例えば、NTTが提供するNTTディレクトリ(http://navi.ntt.jp/)の企業紹介のページに登録されている企業数(1996年9月17日現在)を、図表3に示す。
企業数だけでも1,700社以上あり、また、業種別でも、例えば、建設業では177社、電気機器で165社ある。更に、この例は、NTTディレクトリに登録された企業であり、ディレクトリ・サーバはその他にもいくつかある。
これらディレクトリ・サーバは、ある特定の企業のホームページに到着しようとした場合を検索する場合は便利ではあるが、例えば、リクルート活動や、パートナー検索など、多くの企業の中から自分の要求に叶った企業を選択する場合、以下の欠点がある。
これらの問題を解決するため、インターネット上では、サーチ・エンジンもいくつか提供されているが、それを利用した場合でも、適切な検索キーを選ぶにも熟練が必要であったり、検索結果も膨大となり、上記の問題の根本的解決にはなっていない。
2.2 オンライン・ショッピングの可能性と限界
インターネットが商用ネットとして登場して以来,エレクトリック・コマースの手段として,大きな期待が持たれた。そのため,企業もインターネットを販売チャネルの一つとして期待し,様々な商品がWWWを介して販売されている。
しかし、その商品を購入する個人のインターネットに対する意識は、どうであろうか。これに関する調査はいくつかあるが、ここでは、the
Graphic, Visualization, & Usability Center's(GVU)が調査、分析したGVU's
Fourth WWW User Surveyをもとに、利用者の意識を見てみる。
この調査結果は、WWW上に公開されている。
GVU's Fourth WWW User Surveyの実施期間は、1995年10月10日から同年11月10日である。
この調査では、4種類の質問表があるため、それぞれの質問表に対するサンプル数が異なる。サンプル数は最少で3,631件、最大で23,348件である。
回答は75ヶ国、米国50州、カナダ12州からあった。
この調査のうち、消費に関しては、the University
of Michigan Business Schoolと共同で、HERMESプロジェクトが分析している。
(1)WWWベンダーに求めるもの
今後、WWWでオンラインショッピングが発展するためには、何が重要で、何が不足しているのだろうか。消費者がWWWベンダーに求めているものを、図表4に示す。それを分析すると、以下のことが言える。
(2)支払方法の信頼度
売り主との間でインターネット上で購買しようとした場合、その支払方法として、どのような方法を選ぶかを、図表5に示す。
消費者は、通話料金が無料の電話/FAXを用いて、クレジット番号を売主に通知する決済方法を好んでいる。これは、セキュリティとコスト両方を満足するためであろう。
購入者が、電子メールで自分のクレジット番号を売主に通知する方法は、セキュリティの問題があるためか、ほとんど利用意志はない。
その一方、現在実現されているSHTTPやSSL等セキュリティ機能を用いて購入者が売主に自分のクレジット番号を通知する方法は好まれている。この方法はオンライン上の一連の購入手続きの一環として実現できるため、電話/FAXに比べ操作性は優れているが、セキュリティにまだ不安があるためか、通話料金が無料の電話/FAXによるクレジット番号を通知する決済方法より好まれていない。しかし、これも実績が増え、セキュリティの保証が証明されれば、次第に利用されていくものと思われる。
(3)第3者機関に対する評価
インターネット上では、売り主と直接取引をするばかりでなく、代理店等の第3者機関を通じてモノを購入し、支払もその第3者機関を通じて決済することが見込まれている。
それでは一般の消費者は、上記のような購入から決済までの一連の手続き処理をどのような第3者機関に委ねることが好ましいと考えているのだろうか,を図表6に示す。
この評価は二つの意味合いがあると思われる。
一つは、セキュリティ上の信用であり、もう一つは商品に対する信用である。
セキュリティ上の信用については更に、2つに分かれる。一つは、送信した電文が改竄されたり、盗聴されたりせず、正確に受信者へ送信されるという、ネットワーク上のセキュリティに対する信用であり、もう一つは、送信された電文により決済処理が正しく行われ、プライバシー等が守られるなどの決済業務そのものに対するセキュリティである。
クレジット会社、銀行は実生活でも日常の決済を行っており、そのセキュリティに関して信用は揺るぎないものであり、オンライン上でも好まれている。
Microsoft社等の第3者機関の信用が低いのは、ネットワーク・セキュリティには問題はないとしても、決済処理、プライバシー等の業務上の実績がないためかもしれない。
次に、商品に対する信用とは、商品そのもののブランドに対する信用と、販売する店舗に対する信用(商品そのものはネームバリューはなくても、老舗等の売主に対する信用により、商品を信用する)に分けることができる。商品に対する信用については、クレジット会社は通信販売で商品の価格、品質、配送、アフタサービス等が既に実績があるため、オンライン上の購入に関しても信用が高いものと思われる。銀行がクレジット会社より好感度が若干低いのは、実生活でモノの売買の実績がないためであろうか。
大手クレジット会社、銀行以外の他の機関の信用度が低いのは、上記に示した、@ネットワークに対する信用、A決済業務に対する信用、B店舗に対する信用、C商品に対する信用、の四つの信用を併せ持つ機関としては実績が不十分のためと思われる。
上記の結果から類推するに、消費者にとってベンダーの信用が重要であるということは、インターネット上に新たに参加する、ブランドやネームバリューのない企業にとっては、単独で信用を高めるのは難しいことを示している。そういう企業がインターネット上で信用を高めるには、
等の対策が必要である。
2.3 企業間取引
2.3.1 既存取引先とのネットワーク
(1)インターネットと既存ネットワークとの比較
企業は、今までみたような、消費者等の様に不特定多数のターゲットを相手にしている場合もあれば、その一方、取引企業等のように、特定の企業を相手にしている場合もある。「1.企業のインターネット利用動向」で見たように、インターネットを利用している企業のうち4割の企業は、インターネット上で「取引先との打ち合わせ等にメールを利用」している。また現在インターネット上で受発注、決済等を行うEC(電子商取引)が考えられている。
ところが、取引先とのコミュニケーション手段として、既にパソコン通信、業界VAN/地域VANのネットワークが存在し、それら既存ネットワークも、今後マルチメディアを考慮した付加価値を構築しようとしている。
ここでは、インターネットと、業界VAN/地域VANを比較することにより、取引先とのネットワークの手段としてインターネットが相応しいか、分析する。
ア.VAN利用の実態
各企業は、企業内、関連企業、取引先などを包含したネットワークを構築するにあたり、通信料金の安い、サービスが広域にわたる安全性・信頼性の高い大規模なネットワークを求め、汎用VANを活用している。
業種別に、VANを利用したネットワーク状況をみると、次の通りである。
流通業のVAN利用では、メーカー、卸売業、小売業、物流業といった各主体がそれぞれPOS(販売時点情報管理)、SA(ストア・オートメーション)、EOS(補充発注システム)などの情報システムを実用化しており、VANにより、年中無休化、大規模化、広域化を実現することにより、多品種少量発注、多頻度発注を実現し、販売効率の向上に役立てている。
また、受発注のデータの流れ(商流)、商品のモノの流れ(物流)、決済のカネの流れ(金流)まで含めたトータルなサービス提供が求められており、小売店と卸売業の受発注ネットワークに銀行、物流業者など第三者を包含したネットワークへの展開が始まっている。
一方、地域においては、大手小売業の全国ネットワーク化、大手卸の小売店系列化の動きに対抗して、地域の競合、異業種の卸売業が結束するとともに、その地域の小売業を加えて地域内の共同情報システム化を構築している地域もある。いわゆる地域VANである。
製造業では、VANを利用して企業内、あるいは系列企業(販売会社、倉庫、小売店)との情報交換を密にし、市場動向やその時々の流行などをすばやくキャッチアップして、商品開発や生産計画に反映させようとしている。
金融業では、流通業の受発注データ交換に決済データを加えることにより、都銀、地銀、第二地銀などの枠を越えて複数の金融機関との間で取引関係のある企業に対して、代金の振込や代金回収がネットワーク上で行える。
イ.取引先との電子メールの利用
上記のように、VANは、取引企業間の受発注、決済等で利用されている。
その一方、図表2で見たように、「取引先との打ち合わせ等にメールを利用」するためにインターネットを利用している企業がある。特に、製造業、運輸・通信業、サービス・その他での利用が多い。その一方、建設、金融・保険業、不動産業は少ない。その理由を業種別に推測すると、以下のことが考えられる。
電子メールを初めインターネットのアプリケーションは一般には、非定型業務に向いているが、業界VAN/地域VANとも電子メール等の付加価値を提供しつつあり、取引先企業との電子メールのやり取りも、インターネットでなければできない訳ではない。
(2)取引先とのインターネットの位置付け
現在、インターネット上でEC(電子商取引)を実現すべく、各方面で検討がなされているが、一方、「(1)インターネットと既存ネットワークとの比較」でも見たように、業界VAN/地域VANでは既に、商取引をネットワーク上で実現している。
それでは、商取引の用途において、インターネットはVANと世代交代するのであろうか?
既存ネットワークである業界VAN/地域VANとインターネットを図表7で比較して、世代交代の可能性を考察する。
このように、ECが既存ネットワークからインターネットに置き変わるためには、上記のような問題を解決する必要があるため、インターネット上での企業間のECに関して言えば、普及するには、まだまだ時間がかかるであろう。
2.3.2 新しいネットワークの構築
平成7年中小企業白書では、中小企業の新たなる可能性へのチャレンジのためのキーワードとして、「新分野進出」、「技術開発」、「海外展開」、「情報化」を挙げている。
ここでは、インターネットを使った「情報化」により、「新分野進出」、「技術開発」、「海外展開」にどのように活用できるであろうか?
(1)商用データベースと比較して
新規取引先の開拓、技術開発や、更に新規分野への参入に際しては、それらの情報の入手方法として、「交流会、セミナー等への参加」、「業界紙、専門紙等の購買」、「公的機関への相談」等の対策がなされていた。その他にも、企業の信用照会等のため、商用データベースの利用がある。
商用データベース振興センターの「データベース・サービス実態調査」によると、利用比率の高いところを業種別に挙げると、石油・化学工業を筆頭に電気・一般・輸送機械製造業、建設業、その他の対事業所サービス(不動産、放送、通信、広告、運輸など)である。また、業種別の利用金額は、金融・保険業が5億円を超え、次がその他製造業が3,000万円で続き、以下商業、その他の対事業所サービスとなっている。この傾向は、図表2での、「外部データベースにアクセスして業務に利用」している業種とほぼ同じ傾向にある。
データベースの利用は、調査、研究、営業部門などが主に利用しているが、業種別の利用では、第二次産業では、研究部門と特許部門での利用が多く、第三次産業では、調査部門と営業部門の利用が多い。
このように、現状の商用データベースには需要があり、実際、図表2にも示すように、インターネットを使ってのアクセスも、特に製造業、金融・保険業で、「外部データサービスにアクセスして利用」されており、ビジネス・リサーチの目的で利用されている。
商用データベースがインターネットでも提供される場合、画像、音声などのマルチメディアの特性が生かされると、それなりの需要があるものと思われる。
逆に言えば、商用データベースで検索対象となる企業/業種は、WWWを提供すれば、検索の需要が高いと言えよう。
一方、情報を個別に発信したい企業にとっては、WWWを提供することにより、商用データベースの標準規定にとらわれることなく、その企業の財務、特質、企業活動、詳細な事業内容、生産部門の場合の設備状況、所有特許情報、製品/商品紹介等が、提供可能となる。
従って、ある企業が新規取引先を特定したい場合、現行商用データベースで取引先を絞り込むと同時に、更に検索対象がWWWを公開している場合、そのWWWを参照することにより更に絞りこむ事が可能となる。
ただし、この場合注意が必要なのは、インターネットを利用者している消費者にとっては、通常このような企業情報は不要であるため、消費者向けとは別に、企業向WWWのコンテンツはあくまでも企業をターゲットとすべきである。
(2)技術開発上での利用法
平成7年中小企業白書によると、中小企業において技術開発を行う上での問題点に対する対応策として、「取引先・同業者等の他社との連携」70.4%、「公的試験研究機関との連携」19.9%、「民間の研究機関等の外部機関等の連携」17.7%となっている。この場合、従来上記対策を行う場合、実際に出向くか、郵便、宅配、電話/FAX等でやり取りしていた。しかし、インターネットを利用することにより、文字情報だけでなく、画像データが送信できるため、相談が迅速、かつ的確に行う事ができ、技術相談がネットワークで実現可能となり、また同時に、他の有識者/機関とのネットワークが増幅して構築できる。
(3)海外展開
今日の円高、国内コストの上昇、国内市場の飽和等により、大企業ばかりでなく、中小企業においても海外進出が行われている。自ら海外に進出しないまでも、国内取引先の海外移転や、海外の部品/製品/生産設備の購入等、海外との取引が増えている。
このような国際分業下、中小企業にとってインターネットは、海外との通信手段としてだけでなく、海外のWWWにアクセスすることにより、直接情報を入手できる。
更に、海外の取引先、事業所間で、電子メールにより情報の伝達を行ったり、FTP(ファイル転送)により文書やデータの交換が時差の制約を受けることなく、可能となる。
新たに海外の企業と取引を行う場合、その対象国や取引先がWWWを設置している場合、その国情や企業の情報を直接入手できる。
海外との取引に関して言えば、国際郵便や国際電話と比較して、インターネットはそのオープン性、コスト・パフォーマンス性の利点を大いに発揮できる通信インフラである。
図表3 業種別のWWW公開数
業 種 |
登録数 |
水産/繊維 | 41 |
鉱業 | 3 |
建設 | 177 |
食品 | 141 |
繊維 | 43 |
パルプ/紙 | 8 |
化学 | 32 |
ゴム製品 | 7 |
窯業 | 12 |
鉄鋼 | 19 |
非鉄金属 | 9 |
金属製品 | 26 |
機械 | 92 |
電気機器 | 165 |
輸送用機器 | 66 |
精密機器 | 76 |
その他製造業 | 99 |
商業 | 3 |
金融/保険/証券 | 183 |
不動産 | 133 |
倉庫/運輸関係 | 83 |
通信 | 130 |
電力/ガス | 20 |
サービス | 179 |
放送/報道 | 46 |
合計 | 1,793 |
図表4 WWWベンダーに求めるもの
図表5 支払方法の信頼度
図表6 第3者機関に対する評価
図表7 業界VAN/地域VANとインターネット(1/2)
業界VAN/地域VAN |
インターネット |
|
利用者 |
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利用者数 | 以下例示
メーカ 51社、卸279 社
卸301社、小売74社 等 |
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接続先 |
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アプリケーション |
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取り扱いメディア |
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接続の容易さ |
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図表7 業界VAN/地域VANとインターネット(2/2)
業界VAN/地域VAN |
インターネット |
|||
メリット・/デメリット |
||||
情報入手 |
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ソフトの入手 |
|
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情報発信 |
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ネットワークの信頼性 |
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ネットワークの構築/監視/費用 |
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オープン性 |
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システムの構築 |
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不特定多数へのサービス |
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セキュリティー |
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3.中小企業向けエージェント・サービス構想
3.1 中小企業のニーズ
(1)今までの情報発信の問題点
従来、中小企業の情報化や、情報化による地域産業の活性化が言われ、そのため各方面でその支援策として種々の施策が行われてきた。
例えば、公的機関が中小企業データベースを構築して、中小企業の情報発信の場を提供している。しかし、そのデータベースには、従来、以下の問題があった。
また、インターネットの有効性が叫ばれている現在、地方自治体においてインターネットに情報発信の場を設け、そこから地元の中小企業の紹介等を行っているケースがあるが、この場合でも、先の中小企業データベースと同様の問題がある。
中小企業自体にも、一部先進的企業を除いては、情報化に対する意志はあっても、資金力やノウハウの不足以前に、資金繰りや日々の業務に忙殺されており、情報化に対処できないのが現実である。
また、先進的企業が単独でインターネットにホームページを開設して情報発信を行っても、「2.1
情報発信としての可能性と限界」、「2.2
オンライン・ショッピングの可能性と限界」でもみたように、知名度がない中小企業にとっては、ヒットされない可能性があり、またヒットされても、信用力が不明な中小企業だと無視される可能性がある。
また、インターネット上で商取引が実現するためには、技術的な面の他にも、「2.3
企業間取引」でもみたように、様々な問題がある。
中小企業にとっては、インターネットを用いた情報発信や、あるいは、将来のECへの利用にはまだまだ限界があると思われる。
インターネットは、企業のニーズを解決する手段とはなり得ないのであろうか?
(2)企業のニーズ
個々の企業にとっては、企業固有のニーズがある。しかし、それが持つニーズは、個々に異なるので、従来の定型化されたデータベース型情報発信では、そのニーズにマッチした情報発信には限界がある。
ニーズには、図表8に示すような内容が挙げられる。
図表8 中小企業のニーズ
項番 |
ニーズ |
内容 |
1 |
購買 | 「こういう製品が作れないか?、こういう部品が作れないか」、「こういう材料、資材、設備がほしい」
企業の場合、最終商品ばかりでなく、原材料、資材生産財、技術、ノウハウ等がある。 |
2 |
販売 | いわゆるオンライン・ショッピングとなるが、通常なされているので、特色を出すのが難しい。
中小企業では、商品ではなく、「こんなことができる」、「こんなものを作れる」というノウハウ、技術をどう相手に訴えるかが必要となる。 |
3 |
販路 | 「製品、部品の開発生産能力があるが、販路を持たないので、販路、運送ルート/手段を開拓したい。」
自製品を売るためには流通に乗せなければならず、従来の販路がなくなったり、拡販をしたい場合には、新たな販路が必要となる。 |
4 |
フランチャイズ、代理店 | 「チェーン店展開のため、F.C.に参加してくれる人を募集したい。」
流通業に限らず、製造業においても、販売の他、アフターサービスの面でも、中小企業の場合は自分で行うことは不可能なので、代理店が必要となる。 |
5 |
テナント | 「貸事務所、貸工場を借りたい」、「貸事務所、貸工場を貸したい」
中小企業の場合、貸工場、貸菓子事務所を利用している場合が多く、事業の拡大、展開などの事情が生じた場合は、新たなテナントが必要となる。 |
6 |
利用、リーズ、レンタル | 「生産設備、輸送設備、工事機材等を借りたい」、「生産設備、輸送設備、工事機材等を貸したい」
建設資材、事務用品など、購買するよりも、レンタルで借りた方が合理的な場合がある。 |
7 |
パートナー | 「研究開発、生産に協力してくれるパートナーが欲しい。」
現在、ベンチャー企業の事業化に関し、いくつかの試みがあるが、ベンチャーに限らず、既存の事業にも応用する。例えば、製造業の場合、中小企業では、資金面、設備面で自社単独で製造できない製品でも、他の企業と共同で生計したり、製造したり、また、設備を融通しあったりする場合がある。そのためには、信頼のおけるパートナーが必要となる。 |
8 |
技術情報 | 「新しい生産技術等、専門紙、業界紙に掲載されている情報が欲しい。」 |
9 |
仕事 | 通常、企業のホームページでは、会社紹介等の広告、宣伝が典型的に行われている。
特徴を出すためには、具体的な仕事内容を提示する必要がある。 |
10 |
人材 | 現在、インターネット上での求人、求職は盛んであるため、とくに目新しくはない。特徴を出すとすれば、専門職、熟練工の求人、求職に絞る。 |
11 |
融資 | インターネットで融資側を探しても、融資側としては、融資先の信用調査等の手段が困難である。
可能性としてベンチャー企業/ニュービジネス等、地元金融機関が関与していない事業者がインターネット上でニーズを発信する可能性がある。 |
12 |
相談 | 経営相談、融資相談、技術相談、契約、知的所有権等 |
13 |
異業種交流 | 各地に異業種交流会がある。エージェント・サービスでしか実現できない機能を提示する必要がある。 |
14 |
廃品、リサイクル | 「産業廃棄物を処理したい」
「産業廃棄物を処理します。リサイクルします」 |
(3)実現方式
中小企業に限らず、大企業も図表8に示したようなニーズはあるが、特に大企業に比べ、組織力、資金力が弱く、ネットワークに限界のある中小企業にとって、上記ニーズを解決するために労力を振り分ける余裕がないのが実態である。
また、個々の企業にとっては、恒常的に存在しないニーズがある。例えば、
など、当該ニーズが一旦解決すれば、同じような性質のニーズが次に生じるまでには、間がある。
その一方、あるニーズが解決すれば、別のフェーズのニーズに遷移する。
今までネットワーク上で提供されてきたサービスは、ニーズの変異に即対応できなかった。
そこで、本報告書では、図表9のような、互いの要求を結びつける仲介業務を行うエージェントサービスを提案する。これにより、資金力のない企業が参加しやすいと同時に、地域の中小企業が共同で上記ニーズを集約して発信すれば、継続的でかつ変化のある情報発信となる。
しかし、ニーズを発信する側と、受信する側の要求が一致し、商談が起きても、双方の信用、生産設備等の調査を双方の責任と負担によって行った場合、これらの後続する手続きは従来の手法で行う事になり、エージェント・サービスに参加しても、中小企業にとっては、そのメリットは半減する。そこで、図表9のエージェント・サービスがこれら調査をも含めた仲介業務を行う方法が理想的であろうが、それができない場合でも、調査を委託できる機関の紹介、あるいは登録者の取引銀行等との紹介を仲介業務のサービスの一つとして行えば、中小企業の負担は少なくなる。
ニーズを検索する側から見ると、
の利点がある。
上記方法は、従来の会社紹介や、会社便覧の静的な情報の蓄積ではなく、タイムリーなニーズに対応できる動的な情報の発信を実現する。
図表9 中小企業向けエージェント・サービス構想
(4)仲介業務の事例
現在、中小企業向けのエージェント機能として、ベンチャー企業と、ベンチャー企業のアイデアを事業化してくれる企業とを仲介する機構がいくつかある。
ア.関西経済連合会「新産業創出システム」
関西経済連合会では、「新産業創出システム」を設けようとしてる。
新産業創出システムの仕組みを、図表10に、その機能を図表11に示す。
新産業創出システムの特色は、ニーズ側、シーズ側の募集の他、
図表10 「新産業創出システム」の仕組み
図表11 「新産業創出システム」の機能
|
イ.京都高度技術研究所「知的連合推進機構(ICC)」
京都高度技術研究所では、ベンチャー企業家と、それを事業化できる企業を仲介する組織である「知的連合推進機構(ICC)」(産官学共同の組織)を本年7月に発足した。
インターネット上では、京都高度技術研究所のホームページ上で、ICCの会員募集を行うとともに、ニーズ側(企画、アイデアの立案者側)のベンチャー事業の公開と、シーズ側(技術、設備、資金等の提供側)のベンチャー事業参加の募集を行っている。
ニーズ側とシーズ側の思惑が合致すると、ニーズ側、シーズ側に加えて機構側である「企画・評価委員会」と共同で、事業計画の評価、知的所有権の明確化、利益配分や権利保証の明確化等を、進める。
ICCの特色は、ベンチャー企業と事業化側の単なる仲介を行うに留まらず、
等、当事者の事業化を側面から支援する。
また、京都高度技術研究所があるリサーチパーク敷地内には、中小企業を支援する機関があり、京都高度技術研究所による研究施設、研究設備の貸与、京都市工業試験場による技術支援、京都府中小企業総合センターによる融資斡旋等、敷地内でベンチャー活動がほとんど行える環境を整えている。
新産業創出システムやICCは、ベンチャービジネスを対象としている。
一方、既存産業においては、上記の事例に示すようなエージェント機能はないのが現状である。既存産業においても上記のようなエージェント・サービスは実現できないのであろうか。
3.2 中小企業向けエージェント・サービス構想
企業にとっては、生産や販売などの主業務の他、図表8でみたような、直接売上げや利潤に結び付かない、非定型業務や、間接業務がある。大企業の場合、これら業務は、それらに対応した専門の部署や人員があり、主業務に影響することなく、対処可能である。
しかし、中小企業にとっては、人員がなく、非定型業務も主業務と兼務して対応せざるをえなくなり、そのため、本業以外のことに、時間と労力が削がれる結果となる。
これら中小企業のニーズをより効率よく処理するため、ネットワークを活用した機構が考えられる。
3.2.1 エージェント・サービス構想
エージェント・サービスが構築するネットワークを、図表12に示す。ここでは、エージェント・サービスの概要を説明し、詳細は、「3.2.2 エージェント・サービスの機能」以降で述べる。
図表12 エージェント・サービスのネットワーク
(1)ネットワーク
エージェント・サービスを取り巻くネットワークは、以下のフレームからなる。
ア.ニーズ側
エージェント・サービスに参加している、ニーズを公開したい中小企業である。エージェント・サービスに参加する中小企業についても、特定業種に限ったり、地域に限ることにより、エージェント・サービスの性格が明確になる。
イ.シーズ側
中小企業のニーズを解決してくれる一方の側である。シーズ側も、立場を変えれば、ニーズ側であるが、ここでは、エージェント・サービスに参加している中小企業のニーズを解決する外部の組織という立場で、シーズ側と呼ぶ。
このシーズ側は、外部の大企業であったり、官公庁であったり、個人であったりする。また、外部に限らず、当然、エージェント・サービスに参加している中小企業も有り得る。
ウ.有機的にネットワークされた専門家
インターネットの特徴は、あらゆる人、組織と緩い関係を、ネットワーク上で実現できることである。
従って、エージェント・サービスで各分野の専門家を抱える必要はなく、この緩い関係を活用すればよい。
(2)エージェント・サービスの構造
エージェント・サービスは、以下の3つの柱からなる。
ア.エージェント機能
エージェント機能とは、中小企業のニーズと、外部のシーズを合致させて、中小企業のニーズを解決する機能である。この場合の中小企業のニーズには、単なる販売に限らず、図表8でみたようなニーズがある。これらニーズをサーバに登録することにより、外部からの検索を容易にし、ニーズ側とシーズ側の仲介業務を行う。
イ.知的資源
エージェント機能が、時系列に情報を処理するフロー的側面とすれば、知的資源は、処理を行うためのデータや、処理の過程で得られたノウハウや情報などを蓄積した資源である。
エージェント機能は、以下の知的資源を持つ。
(ア)ニーズ・データベース
中小企業が求めるニーズを格納している資源である。
(イ)企業情報
エージェント・サービスに加入している中小企業の会社照会、財務情報などの、外部から照会された場合、最低限必要な客観的データである。これは、ホームページという形で公開されることにより、外部から自由に閲覧できる。
(ウ)問題別データベース
中小企業が持つノウハウや、業務を遂行する場合派生する色々な相談や、その解決方法を蓄積したデータベースである。
ウ.コーディネート機能
機構を円滑に機動させるためには、施設や設備等のハード面や、プログラムやデータベース等のソフト面の他、人的資源が重要となる。本業以外の知識には疎い中小企業を支援する面で、コーディネータ的存在が必要である。コーディネータは以下の事を行う。
中小企業の要件を掘り起こし、具現化し、実現度を見極める。
要件が、不特定多数に対するニーズや、広範囲に公募するニーズであれば、ニーズ・データベースに登録する。
中小企業が相談、助言を必要とする場合や、事業遂行上の各種手配、手続きを行う場合、「有機的にネットワーク化された専門家」を仲介する。
3.2.2 エージェント・サービスの機能
エージェント・サービスは、上で述べたようなネットワークと構造を持っているが、その機能の流れを以下に説明する。
エージェント・サービスは、中小企業のニーズを解決する事を目的としている。中小企業のニーズを抽出し、そのニーズを解決するまでの流れを、図表13に示す。
図表13 ニーズとシーズの仲介
(1)ニーズの登録(フェーズ1)
中小企業のニーズをエージェント・サービスが提供するニーズ・データベースに登録する。ここで重要な事は、以下の事である。
中小企業が自らのニーズを的確に表現できない場合、エージェント・サービスが支援する必要が出てくる。その意味で、エージェント・サービスに所属するコーディネータが重要な意味を持つ。
中小企業自ら登録する場合もあれば、中小企業がインターネット環境を持たない場合、エージェント・サービスがニーズの登録を代行する必要が出てくる。
中小企業の自主的なニーズ登録を待つだけでは、ニーズ・データベースの内容は活性化しない。中小企業に直接働きかけ、ニーズを掘り起こすことも、コーディネータの重要な仕事である。
登録されるニーズの内容は、基本的には、中小企業の自主性に任せるべきであろう。しかし、エージェント・サービスそのものの信用は、データベースに登録されるニーズの内容の信憑性に裏打ちされなければならない。
そのためにも、エージェント・サービスは、ニーズの信憑性を審査する必要がある。
(2)ニーズの検索(フェーズ2)
ニーズ・データベースに登録されたニーズは、外部の企業、官公庁、団体等のシーズ側から検索される。ただし、この場合でも、ただ検索されるのを待つだけでは、膨大なWWWサーバの中から、自サーバへはなかなかアクセスされないであろう。そのためにも、マスメディアを使った宣伝広告、著名ディレクトリ・サーバへの登録や、著名ホームページへの広告掲載、各種企業や、業界団体への働きかけが必要となる。
また、ニーズ・データベースの中からニーズを抽出する検索アプリケーションの提供も必要となろう。
シーズ側が、自分の目的にあったニーズをヒットした場合、シーズ側としては、そのニーズを登録した中小企業の信用性と、ニーズの内容の信憑性が重要となる。
シーズ側としては、中小企業の業務内容や、財務状況は、エージェント・サービスのホームページで入手できるが、ホームページの内容には第三者の評価がないため、調査機関や金融機関に照合する事になる。この場合、シーズ側が独自に行う場合もあるが、エージェント・サービスとしても、シーズ側からの問合わせに対して、エージェント・サービスと有機的にネットワークされた専門家を紹介するなどの支援が必要となろう。
また逆に、シーズ側から、ニーズ側へ商談の申込があっても、シーズ側企業が未知の場合が有り得る。その場合、シーズ側企業の信用調査を中小企業独自で行う場合でも、信用調査のノウハウが不足していたり、相談相手が分からない場合がある。それらの問題を補完するため、エージェント・サービスで、有機的にネットワークされた専門家を紹介するなどの支援が必要となる。
(3)契約(フェーズ3)
契約は、あくまでもニーズ側とシーズ側の当事者間の問題である。但し、契約の内容によっては、当事者間では解決できない場合がある。
例えば、ニーズ側とシーズ側で、ニュー・ビジネスを起こそうとした場合、出資比率、資産配分、知的所有権、利益配分等の問題がある。これらの問題を当時者間で調整しようとすると、中小企業に不利な契約になる可能性がある。そこでエージェント・サービスとしては、中立な第三者を調停者とするため、エージェント・サービスと有機的にネットワークされた専門家を招聘する等の支援が必要である。
(4)エージェント・サービスの立場
以上に述べたように、エージェント・サービスはあくまでも、仲介や支援を行うべきであり、直接当事者とはなるべきではない。
もし当事者となった場合、全ての業務を直接行う事になって、大規模な組織となると同時に、ニーズ側とシーズ側の利害関係に巻き込まれる可能性があるためである。
3.2.3 有機的にネットワークされた専門家
「3.2.2エージェント・サービスの機能」で見たように、エージェント・サービスでは、直接中小企業のニーズを解決するのではなく、中小企業に対し、そのニーズを解決するための場を提供し、ニーズ解決の活動を支援する。ただし、中小企業のニーズを解決するためには、専門的な知識やノウハウが必要となる。その場合、エージェント・サービス自らそのノウハウを持つには、限界がある。そこで、専門的な知識やノウハウを持った専門家を、エージェント機構にどう取り込むかが重要となる。
(1)中小企業の業務支援
中小企業にとっては、日常の活動に対しては、自己解決するものである。しかし、新規業務や、非定型業務の場合、新たに知識やノウハウを習得する必要が出てくる。中小企業がエージェント・サービスを介して商談を受けたとしても、それを契約まで持ち込むまでには、実現度合や採算性の目星を着けたり、各種手続きの手順、書類の書き方など、それらの知識やノウハウはあらゆる分野に及ぶ。図表14に業務支援を行う分野を整理する。
図表14 業務支援の分野
法律・条例 | 商法、民法、労働基準法 知的所有権、工業所有権 PL法、消費者問題、環境問題 JIS/ISO,各種規格 等々 |
経営一般 | 経営戦略、事業分野開拓 業務改善、BPR 労務福祉 財務、商務、税務 等々 |
国際化 | 進出先外国の事情、法制度 海外進出時の各種手続き 提携先企業の各種調査 労働事情、国民性、生産性 等々 |
業種対応 | 政治・経済情勢 業界動向、市場動向 取引慣行、関連団体の事情 等々 |
技術対応 | CALS CAD/CAM FA/OA,情報化、ネットワーク化 研究開発 等々 |
その他 | 異業種交流 行政手続き、登録手続き 資金調達 人材育成、教育訓練 |
(2)有機的にネットワークされた専門家
大企業の場合、図表14で示した業務は、内部にその様な専門部署を持ち、自己解決している場合が多い。しかし、中小企業の場合は、上記のような非定型的な業務に即した組織や人員配置を行う事は不可能である。そのため、中小企業のこれら業務を支援するための、各種公共団体や専門家が存在する。
エージェント・サービスとしては、専門分野の専門家を内部保留する必要はなく、ネットワークとして連携を持てばよい。中小企業からの要望により必要となった時点で、このネットワークを利用して中小企業に紹介する。このネットワークの一つの手段として、インターネットは有効である。現在、大学は勿論の事、省庁や、各自治体、公的・民間の学術研究所・技術研究所、商工会議所等、インターネットに参加しており、これらの組織と連携する事により、中小企業の業務支援が可能となる。
3.3 エージェント・サービスの運営
3.3.1 ニーズ側中小企業の参加
(1)対象となる中小企業体質
中小企業にも、その経営体質は、現状を打開しようと、積極的に新たな試みを行う先進的企業、現状を維持しようとする保守的企業、更に、中間層に分かれる。
これら経営体質を持つ企業は、インターネットに対してもその姿勢は異なる。「企業革新のための中小企業の企業間ネットワークに関する研究」(財団法人 中小企業総合研究機構 平成7年度)によると、インターネットの情報通信ネットワークとしての利用状況は、「よく利用する、時々利用する」企業は、3%程度、「利用していないが、将来は利用したい」企業が50.9%、「利用していないし将来も利用しない」企業が20.0%と分かれる。
経営体質が先進的企業は、インターネットに対しても積極的に利用するであろう。保守的企業は、インターネットに対しても、否定的であろうし、利用意志もないであろう。
一方、中間層としては、インターネットに対しては、「とりあえず参加してみた」という企業もあれば、現状は、資金やノウハウ不足、あるいは、見返りが分からない等諸事情の理由のためインターネットに参加できないが、条件が整えば利用したい企業もいるであろう。
それでは、エージェント・サービスとしては、図表15の企業分類のうち、どの分類の企業に参画を働きかけるべきであろうか。
図表15 対象となる中小企業
先進的企業は、エージェント・サービスに参画せずとも、自ら情報発信、情報受信を行い、自分の問題をインターネットを利用して解決するであろう。あるいは、エージェント・サービス側が働きかけずとも、エージェント・サービスの有効性を評価して、むこうから積極的に参加するであろう。
一方、保守的企業に対する働きかけは、エージェント・サービスでは有効に機能しないであろう。エージェント・サービスが保守的企業までも後押ししようとした場合、動機付け、教育・指導等に負荷がかかり、他参加者に対するフォローが疎かになる。これら保守的企業に対する情報化推進は、各地の公的支援センターや、民間の情報処理ベンダー等が相応しいであろう。
エージェント・サービスとしては、中間層をターゲットとして、参画を働きかけるべきである。中間層の中で、新たにインターネットを利用した企業でも、ほとんどの企業が図表2で見たように、「とりあえず利用して様子を見ている」であろう。そういう中で、エージェント・サービスは、中小企業の現実的な要求を解決する可能性があるため、インターネットへの目的意識が持てる。
その他、中間層の中でも、利用意志があるが、まだ利用していない企業もいる。これら企業に対しては、エージェント・サービスが代行して、ニーズ登録を行ったり、仲介を行い、企業活動を支援することは可能である。但し、中小企業側としてはインターネットに直接接続していないため、直接的効果は半減するであろう。
また、これら中小企業がインターネットを利用しようとした場合の、インターネット利用に関するコンサルティングや、回線や機器の貸与に関しては、他の公的機関に任せた方がよい。
以上のように、エージェント・サービスとしては、ターゲットとする企業は、先進的企業、中間層、特にインターネットを新たに利用した企業を主とし、利用環境はないが利用意志のある「とりあえず利用して様子を見ている」企業も支援する。
(2)参加形式
ニーズ側の中小企業がエージェント・サービスに参加する場合、その形式として、参加に制限を設けないオープン型と、参加に制限を設けるクローズ型がある。また、クローズ型にも、その制限の条件として特定業種を対象としたり、地域の企業を対象とする等、特性毎に対象を分ける方法もある。
ア.オープン型
インターネットは、オープンであり、またグローバルな特性を持つ。そのため、このエージェント・サービスのニーズ側として、あらゆる地域から、あらゆる業種の中小企業が参加できる。しかしその一方、オープンが故に、多種多様な中小企業が参加できるがゆえに、以下の問題が出てくる。
また業種によってインターネットの有効性の度合、ニーズの性質ははまちまちであり、エージェント・サービスの利用に適した業種があるかもしれない。
イ.クローズ型
エージェント・サービスに参加するニーズ側の中小企業を制限する場合、その制限条件としては、地域単位の制限と、業種単位の制限が考えられる。
(ア)業種単位
業種単位の場合も、地域にとらわれず参加するケースと、地域に限定するケースがある。
業種に特化した場合、確かにエージェント・サービスとしては、コーディネートが容易であったり、目的がはっきりするであろう。しかし、同一業種の場合、参加企業間で牽制し合ったり、利害関係が生じる可能性がある。また、この場合、異業種交流という点からは、それ程効果は望めない。
また、地域にとらわれず参加する場合、「ア. オープン型」でみたような問題も生じる。
(イ)地域単位
地域単位の有効な点は、エージェント・サービスに参加する中小企業の信用度や、ニーズの信憑性が把握しやすく、また、その地域の特性や問題点等、中小企業が置かれている環境も把握でき、有効なコーディネート作業ができる。
また、その地域の自治体や、商工会議所の協力も得易い。
更に、その地域特性をエージェント・サービスに反映する事により、エージェント・サービスの特性が顕在化できる。
また、エージェント・サービスに参加する企業間、あるいは近隣地域の企業間とのシーズ−ニーズ関係が成立したり、交流が深まることにより、地域の産業が活性化したり、地域そのものが活性化される効果も期待できる。
インターネットの特性として、地域にとらわれないグローバルな性格を持つが、逆に、地域単位で利用することにより、地域内の企業間で互いの不足している部分を補って、有効に利用できるはずであり、エージェント・サービスを核として、外部とのネットワーク交流が盛んになる可能性もある。
3.3.2 運営
(1)運営主体
エージェント・サービスを運営する組織としては、非営利団体か、営利団体か、あるいは、公的機関か、私的機関か、等の様々な形態が考えられる。しかし、「3.3.1(2) 参加形式」でみたように、中小企業向けのエージェント・サービスは地域ぐるみで取り組んだ方が効果的であろう。その場合でも、図表16に示すようないくつかの運用主体が考えられる。
中小企業の立場で言えば、エージェント・サービスとして信用できるのは、自治体か商工会議所であり、また金銭的に新たな負担を課せられるのを回避する意味でも、自治体か商工会議所での運営を望むであろう。
理想的な運営主体は、商工会議所であろうし、次に、自治体、商工会議所等が出資した第三セクター方式であろう。
図表16 運営主体
運営主体 |
特徴 |
自治体 | 中立性、公的性が重要視されるため、自治体が行っている他の地域振興策と重複したり、逆に活動が広範囲に渡り、対応できなくなる可能性がある。 |
商工会議所(/商工会) | 商工会議所は、中小企業向けの相談や指導を行うための組織を持っており、その点では、エージェント・サービスのコーディネート機能に併用活用したり、資源を流用できる。さらに、商工会議所自体に信用力がある組織であり、そこの会員企業に対しても、信用度が増す。
しかし、商工会議所は、会員企業の会費でなりたっており、会員以外の企業の扱いが課題となる。 |
地域の民間企業 | 民間企業の場合、利潤を上げるため、積極的に運営するであろう。しかし、
地方の企業の場合、その運営主体に対する外部からの信用度評価を上げる努力が必要であり、また、地域の自治体、商工会議所等の各団体の協力が制限される可能性がある。 |
会員制的組織体
(共同組合、三セク等) |
ニーズ側中小企業が会費を出して設立する形式である。この場合、中小企業の負担を軽減させるため、自治体や、各種団体の協力が必要となる。 |
(2)有機的にネットワーク化された専門家
インターネットは、外部とのコミュニケーションを行う場合、有効な手段として評価されている。これは中小企業の場合でも、外部の専門家に問合わせや相談をしたい場合でも有効でる。そのためにも、エージェント・サービスとしては、ホームページを開設している機関・団体のURLアドレスリストを提供して、中小企業自らが検索できるサービスを提供する必要がある。それにより、中小企業は、エージェント・サービスを出発点として、活動ができる。
この時大事な事は、URLリストのカテゴライズは、機関毎の分類も必要であるが、中小企業としては、「どこに」相談するか、よりも、「何を」相談するかが大事なのであって、その場合、自分の問題を解決してくれるのであれば、「機構」は問題ではない。そのためには、図表14で示したような、問合わせ内容の性質毎に分類した方が、検索しやすい。あるいは、その問合わせ内容の項目をキーワードとして検索できるような、サーチ・エンジンを提供すれば、更に使い勝手がよくなる。
しかし、その場合でも、中小企業自身、どこに問合わせればいいのか、どういう内容で問い合わせればいいのか、がわからないケースがある。そのためにも、エージェント・サービスのコーディネータがその検索の助言をしたり、あるいは代行して検索する必要がでてくる。
有機的にネットワーク化された専門家に対しては、単なるURLのフリー・リンクのような形ではなく、エージェント・サービスと協定を結び、エージェント・サービスの機能の一つとして組み込むことが必要である。そうすることにより、中小企業からの要望があった時点での対応が迅速、かつ円滑に進む。
有機的にネットワーク化された専門家の立場から言えば、未知の中小企業からの依頼よりも、協定を結んだエージェント・サービスから仲介された中小企業からの依頼の方が、信憑性や信頼性を持つであろう。
(3)シーズ側
エージェント・サービスのニーズ・データベースを検索するシーズ側は、誰でも参加できる。このシーズ側は、官公庁や自治体であったり、大企業であったり、中小企業であったり、あるいは個人の可能性もある。もしエージェント・サービスとしてシーズ側に対して制限を設けては、効果は期待できない。ニーズの開示はオープンであるべきであり、それゆえ、図表13で示したシーズ側の信用調査が重要となる。
(4)情報の蓄積
「3.2.1エージェント・サービス」で示したように、エージェント・サービスが持っている知的資源として、@ニーズ・データベース、A企業情報、B問題別データベースを挙げた。このうち、@ニーズ・データベースに登録する内容としては、図表8で示したような項目が挙げられる。また、A企業情報に関して言えば、企業のインターネットの利用方法として最も一般的に行われている方法である。
一方、これまで述べてきたような、商談から契約までの間には、様々な検討や手続きが発生する。その場合、それらのノウハウや、一連の作業の流れをエージェント・サービスの資源として蓄積してあれば、中小企業としても、有効に活用できる。それは、エージェント・サービスが対応した様々な仲介業務の内容を事例集として蓄積したり、あるいは、その中で生じた手続き等に関してFAQの形式で蓄積する。そうする事によって、中小企業は、問題解決のヒントを得られるだろうし、また、エージェント・サービスそのものの負担が軽減される。
(5)コーディネータの役割
エージェント・サービスの中のコーディネータは、今まで見てきたように、中小企業の要件そのものを解決する必要はない。飽くまでも、解決するための機会を増やし、解決してくれる第三者を仲介するものである。
しかし、そのためにコーディネータとしては、中小企業のニーズを的確に具現化し、そのニーズを解決するまでの手順、流れを指導できるノウハウ、あるいは、中小企業の問題をどこに問い合わせれば助言ができるか、という知識が必要である。具体的には、中小企業診断士の資格を持っている人が適任であろう。
3.4 更なる発展のためには
(1)ネットワークの発展
今までは、単体のエージェント・サービスを想定していた。しかし、単体のエージェント・サービスがあったとしても、その活動範囲は、特定地域内、または特定業種の範囲内に留まる可能性がある。しかし、例えば、ある一定の単位で設立された複数のエージェント同士が互いにネットワークを持てば、更に広範囲なネットワークが可能となる。
例えば、図表17に示すように、ある県毎にエージェント・サービスを設立した場合を仮定する。この単位は、地方単位や県単位かもしれないし、市町村単位、または、その中間かもしれない。どちらにしても例えば、設立単位が県毎にあり、それが全国に設立された場合、中小企業同士のニーズの交流が可能となり、より効率的で、より有効なニーズ解決策が見つかる機会が増える。
但し、この場合、以下の前提が必要となる。
ある県の中小企業が、自分の所属するエージェント・サービス以外のニーズを検索する場合、各々のニーズ・データベースを操作するのは不便である。それを解決するためにも、自動的に全エージェント・サービスのニーズ・データベースを検索するようなサーチ・エンジン機能が必要であろう。
図表17 ネットワークのネットワーク(例)
(2)アウトソース
企業にとってコスト削減を図ろうとした場合、図表14で示した業務はその第一候補となる。特に、直接利益に結び着かない間接業務のコストダウンは、重要となる。
給与計算の場合、従来は、タイムカードと帳簿を照らし合せて計算していたが、それが、汎用コンピュータでEDP化され、それが更に、ダウンサイジングが可能となって、パソコンで計算したり、クライアント/サーバ・システムで給与システムを構築したり、という遷移を取ってきた。しかし、この給与システムも、専門の業者に外部委託をすれば、社内に給与システムを社内に持つ必要はなくなり、間接業務のコストが削減できる。ただ、給与に関する内容は、社内秘密情報であり、かつプライバシー情報でもあるため、外部に漏れてはならない。しかし、これに関しては、専門の業者が事業として当然守るべき原則であり、実際、給与計算を外部に委託している企業もいる。
その他、年金や保険の手続きや、福利厚生設備等に関しても、アウトソーシングが可能である。
しかし、このアウト・ソーシングが実現できるためには、規模の経済が成り立たなければならない。複数の企業の給与計算事務が委託されないと、専門の業者としては成り立たないためである。
そこで、例えば、エージェント・サービスに参加している企業の共通的な業務をアウト・ソーシングすることも可能であろう。これは更に、ヴァーチャル・カンパニーの形態を取るかもしれない。
(3)課題
この公的エージェント・サービスを成功裡に運営するためには、今後、以下の課題を検討する必要がある。
しかし、この点に関して言えば、事業の発展のためには積極的に外部に働きかけるべきであり、オープン型経営を目指す場合には、そのリスクは常にある。また、中小企業の持つ技術やノウハウを積極的に特許や知的所有権を登録して、自分自身の権利を自らガードすべきであろう。更に、人材流出の懸念については、逆に優秀な人材を確保する機会が増えるとも言える。
結局は、中小企業に限らず、企業として、「じっと耐えて変化をやり過ごす」経営方針で、座して衰退を待つのか、多少のリスクを覚悟でオープン型経営を図り、積極的に外部に働きかけるか、の選択を迫られている状態であると言える。
本調査研究では、中小企業のニーズの解決策の一手段として、エージェント・サービス構想を提案した。今後、その実現性、有効性を検証するとともに、ほんとに中小企業の問題解決の位置手段となり得るかを、中小企業の立場に立って、実証していきたい。
おわりに
慶応義塾大学ビジネススクールの國領二郎・竹田陽子が提唱する「取引仲介型のプラットフォーム・ビジネス」という概念がある。その概念とは、
プラットフォーム・ビジネスとは、だれもが明確な条件で提供を受けられる商品やサービスの供給を通じて、第三者間の取引を活性化させたり、新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割を私的ビジネスとしておこなっている存在のことを指す。
Copyright(C) "1996" Electronic Commerce Research Project |
ことであり、
一取引あたりの取引額が大きい場合は、企業は独自にこれらの情報を得ようとするであろう。しかし、まれに少額しか取引しない相手には、企業は情報収集にあまりコストをかけることができない。そこに、取引を仲介することを専門にする業者、すなわち、取引仲介型のプラットフォーム・ビジネスが存在する価値が生まれる。
Copyright(C) "1996" Electronic Commerce Research Project |
この「プラットフォーム・ビジネス」では以下の5つの機能が必要とされている。それは、
(1)検索、(2)信用仲介、(3)経済評価、(4)標準取引手順、(5)統合である。
本稿では、上記に示した「プラットフォーム」の概念を、中小企業のニーズの仲介に応用したものである。更に、その仲介機能の運営主体を私的ビジネスにとらわれる事なく、公的サービスの一つとして展開した。
本調査研究で示したエージェント・サービスは、「プラットフォーム・ビジネス」に必要な「(1)検索」と、「(2)信用仲介」を提供するものである。また、本エージェント・サービスが仲介するニーズの中には、数値で示されるような「(3)経済評価」ができない場合がほとんどであろう。ただし、エージェント・サービスは、経済評価をするための手段を提供ニーズ側、シーズ側のコストを削減する効果が期待できる。
「(4)標準取引手順」については、ニーズというものに対し、標準化という考えはそぐわないかもしれない。ただし、「3.4
更なる発展のためには
(1)ネットワークの発展」で述べたように、エージェント・サービスが全国に拡大した場合、エージェント・サービスが提供する各種サービスの標準化は必須である。
國領二郎・竹田陽子は、「プラットフォーム・ビジネスは、探索、信用仲介、経済評価、標準取引手順のすべての機能を必ず備える必要はなく」、「ある機能は単機能のプラットフォーム・ビジネスを使って取引を成立させることができる。」とも述べている。エージェント・サービス単独では、プラットフォーム・ビジネスで必要な総ての機能は提供できないかもしれないが、「有機的にネットワーク化された専門家」を取り込むことにより、「プラットフォーム・ビジネス」の5番目の「統合」の機能を提供していると言える。
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