No.102 1997年3月

ドイツ電気通信法のユニバーサルサービス

                      通信経済研究部主任研究官   実積  寿也

 情報通信技術の高度化、市場の国際化等により、世界の電気通信事業には大きな変革がもたらせつつある。NTT再編成を含む我が国の第二次情報通信改革、米国における1996年通信法の制定、さらには欧州連合(EU)からの相次ぐ指令発出は、そういった変革への各国政府の対応を示すものであり、ドイツでは、第一次郵電改革(1989年〜)、第二次郵電改革(1995年〜)と具体化されている。
 そのドイツで、昨年夏、第二次郵電改革の一環として、電気通信分野の競争を大幅に進めることを主たる目的としてドイツ電気通信法(Telekommunikationsgesetz:TKG)が制定・施行され、1998年1月1日からの電気通信市場の完全自由化が決定された。新法に定められたユニバーサル・サービス規定は次の3点に集約できる。
 @ユニバーサル・サービスの範囲は「音声電話サービス+電気通信設備の運営(提供)+若干の附加機能」。
 Aユニバーサル・サービスの確保の責任は「支配的事業者」に課される。
 Bユニバーサル・サービスの確保に必要なコストは、当該市場において4%以上の売上高シェアを有する免許事業者に対しユニバーサル・サービス負担金を課すことで調達される。
 ユニバーサル・サービスに対するドイツ的アプローチは、「法律で規定するものは最低限度のみ。全ては市場競争で決定される。」というフレーズに要約することができ、市場原理に全幅の信頼を置き、国民に対して電気通信ユーザーとしての自己責任を最大限に求めるというもので、地域格差が僅少であるといったドイツの国内事情に適した枠組みとなっている。同様のアプローチは、高度情報化に向けてのインフラ整備に係るドイツ連邦郵電省のスタンスにも共通している。
 本稿では、ユニバーサル・サービスの確保フレームワークの評価基準に関する欧州連合(EU)の委員会通信(1996年11月27日)、ドイツ電気通信法成立の過程で表明された関係者の意見、及び、昨年10月のヒアリング調査によって得られた知見等を踏まえて報告する。