No.102 1997年3月

身体障害者の情報通信機器の利用実態と今後の展望

                     情報通信システム研究室   姫野  桂一

 我が国の18歳以上の身体障害者には、厚生省の「身体障害者実態報告」によれば、1965年8月の約105万人、人口1,000人あたり16.0人から1991年11月の約272万人、人口1,000人あたり28.3人と増加している(厚生省データでは1991年11月が最新)。
 今後本格的な高齢者社会を迎えるわが国においては、身体障害者に対する支援策は、高齢者に対する支援策と密接に関わり、重要性を増すものと考えられる。
 しかし、身体障害者を支援する施策は、身体障害者以外の健常者が考案したものが多いため、実用化したものの多くは、身体障害者にとって十分役立つものとはなっていないことが多いという指摘もある。
 本稿では、1994年度、1995年度に当研究所が行った身体障害者と情報通信機器関連の調査データをもとに、利用現況と今後の展望を整理したものである。その内容を総括すると概ね以下のことがいえる。
(1)電話の利用については、他の身体障害者と比べて、目の不自由な人の利用頻度が高く、ファクシミリの所有率は耳の不自由な人が著しく高い。
(2)テレビの視聴時間は他の身体障害者と比べて、体の不自由な人がやや長い。一方、ラジオの聴取時間は、目の不自由な人が他の身体障害者と比べて著しく長い。
(3)世の中を知るための情報源としては、テレビ、ラジオ、新聞の他に自治体の広報誌も比較的大きな割合を占めている。
(4)身体障害者の雇用に関しては、通勤・移動、安全管理等の問題点の他に、他人とのコミュニケーション等の要因が問題となっている。また、身体障害者の雇用に対する企業の取り組みについても、情報システムの整備は他の取り組みの内容と比べてあまり重視されていない傾向にある。
(5)現在の経済情勢からは、短期的な実現は難しいが、新しい情報通信機器の利用により、情報交流の拡大が進めば、身体障害者の社会参加の機会も今よりもずっと幅広く多様なものになることが期待される。そのためには、郵政省のみならず、産業界を含めたより広い分野での協力が必要不可欠であるといえる。