1.はじめに

 1985年の第一次情報通信改革により電気通信分野に競争原理が導入された結果、今日まで多数の新規参入事業者があらわれ、互いにサービスを競いあっている。基本的な電気通信サービスである電話サービスに関しても競争が進展しており、新サービスの導入と料金表の変更が繰り返されている。料金表の変更は、通話料金水準の引き下げ、あるいは、土曜・日曜・祝日あるいは深夜・早朝の割引料金の導入や距離段階区分の単純化などの料金体系自体の変更、という二つの手段で実施される。例えば、NTTを利用した東京−大阪間の平日昼間3分間の通話利用の場合、1985年当時400円必要であったところが、現在90円となるなど、大幅な値下げが実施され、また、距離区分については11段階から7段階へと集約され、その結果、遠近格差については、最大1:40から最大1:9へと縮小するように料金体系自体が変更されてきている。
 そのため、通話料金の水準の経時的な推移を明らかにすることが興味の対象となるが、通話料金が曜日・通話時間帯・距離区分等によって細かくセグメント化された数多くの単位料金から構成されたひとつのシステム(「料金表」)であること、及び、料金改定においては、全ての単位料金が同一の額・割合だけ変更されることは稀で、現実には、長距離通信の部分を中心に値下げ(あるいは値下げ効果を伴う距離段階区分の単純化)が実施されてきたこと、距離段階区分の変更や、割引料金制の導入などで料金表の構造自体が変化してきていること、などから、時点の異なる料金表同士を直接比較しても、通話料金の推移を明確に示すのは困難である。そこで、セグメント毎に設定された通話料金を何らかのウェイト付けをして集計したもの同士を比較するという間接的な方法を採用することとした。
 本稿では、「通話サービスの利用は、曜日・時間帯・距離区分毎に提供されるセグメント毎の通話サービスの個別の利用を集計することにより表現することができる」という考え方に立脚し、各セグメントの単位時間当たりの通話料金を、基準年における対応する需要量から算出したウェイトで集計することによって、通話料金指数の構築を試みる。
 本稿の構成は次のとおりである。まず第2節において、通話料金指数の考え方、及び、算定に用いたデータについて説明する。第3節では具体的な算出方法を示し、算出結果を第4節に示す。締めくくりの第5節では、本稿で用いた手法の問題点や今後の利用可能性について論じる。