郵政研究所月報

2000.7


調査研究論文

携帯電話・PHS事業の現状に関する分析


通信経済研究部主任研究官
研究官
研究官

長島 俊一
山内 俊英
橘  成泰

[要約]

 携帯電話事業者及びPHS事業者全社に実施したアンケート結果等を用いて、移動体通信市場の現状について分析を行なった。
 (1) 携帯電話とPHSに関しその優位性を比較した結果から、両者の提供するサービスの間の違いが薄れてきており、特に、現時点ではPHSが優位である通話音質やデータ通信速度について、将来的にはその優位性が失われるという顕著な傾向が見られた。
 (2) 現在の最優先課題としては、携帯電話事業者・PHS事業者ともに大部分の事業者が「加入者数の増加」をあげている。一方、将来(3年後程度)の最優先課題は、携帯電話事業者が「主に加入者からの収入増」であるのに対し、PHS事業者では現在と同じ「加入者数の増加」であり、両者に戦略の違いがみられる。
 (3) 非音声系サービスの中で各事業者が最も重視しているサービスは電子メールやホームページの閲覧であった。携帯電話・PHSは、音声によるコミュニケーションツールからメール交換・情報収集に加えて商品購入も行なうためのツールに変貌しつつあり、必要な情報にいつでもどこからでもアクセスできる環境を確保することで、人々の生活を大きく変えていくのではないかと考えられる。さらに、その利用は人間だけにとどまらず自動販売機の在庫管理等機械での利用も始まっており、今後、カーナビ、各種機器の遠隔制御、位置情報提供等幅広い分野での利用が想定されるなど発展の余地は大きいと考えられる。
 (4) エリア展開の状況をみると「積極的に展開」を進めるPHS事業者が昨年と比べて大きく増加しており、今後伸ばしたい加入者層に関する回答でも、携帯電話事業者の主要な加入者層と考えられる「30歳未満(除く学生)の男性」をターゲットとするPHS事業者が急増するなど、一部のPHS事業者が再び積極的な事業展開に転じてきた姿勢がうかがえる。
 (5) IMT―2000に関しては料金イメージがまだ明らかでないが、昨年度の調査と比較して携帯電話事業者とPHS事業者の考え方が近づいてきており、通話音質やデータ通信速度に優位性をもつと考えられるIMT―2000の特徴が理解され始めたと考えられる。「ライフスタイルが変化する」とする回答も多く、移動体通信のマルチメディア化が進展し、利用方法が多様化することにより我々の生活を大きく変えていくことが予想される。

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