郵政研究所月報

2000.9


調査研究論文

双方向性ネットワークを利用した調査手法とその影響 


通信経済研究部主任研究官

能見  正

[要約]

1 インターネットに代表されるような「双方向性」を有するネットワークを活用して収集した「大量のフィードバック情報」をもとに意見集約を行う取組みには、「迅速」かつ「低コスト」で実現可能であるという点のほか、従来よりも多様かつ複雑な方法により意見集約を行うことが可能であることから、双方向性ネットワークを利用した手法には大きな将来性があると考えられるが、その一方で、どのような者を対象とした調査なのか明確でないこと(調査対象者は誰か)、回答者の属性に偏りがあること等を理由として、調査結果の信頼性やその解釈方法がしばしば問題とされている。
2 本稿では、双方向性ネットワークを利用して意見を集約するために用いられる調査手法について、文献調査及びヒアリング調査を行った結果からその利用実態や問題点等について整理するとともに、既存の調査手法とインターネットを利用した調査手法(Webを利用した調査)との比較分析を行うため、既存の調査手法(訪問留置調査)により用いられた調査票の一部を活用して、インターネット上においてWebを利用したアンケート調査を行い、調査結果にどのような違いが表れるのかについて比較分析した。
3 比較分析の結果から、回答者属性の偏りによる影響が無視できない設問と、回答者属性の違いが回答結果に影響を及ぼしていない設問が見られた。
  また、回答者属性の偏りの影響を受けていないと思われる設問の回答結果について、既存の調査手法による回答結果とWebを利用した調査の回答の分布の中央値の差を統計的に検定したところ、多くの場合において両調査間の回答結果には有意差が存在していた。このように差が現れる原因としては、回答者属性以外の要因、すなわち手法上の違いが結果に影響を及ぼしていると考えられる。
  手法上の違いとは、「回答方法(パソコン画面上記入と紙面上記入)の違い」と「インターネットユーザーである回答者の特性の違い」の両方の側面があるものと推定される。
4 また、回答者属性の補正(ウェイトバック)を行うことにより、回答者属性の偏りの影響を取り除いて比較分析をした結果についても、Webを利用した調査と既存の調査手法による調査結果の間には依然として有意差が認められた。このことからも、インターネット調査と既存調査の回答結果の違いは、回答者属性の偏りの影響以外、すなわち手法上の違いが結果に影響を及ぼしているものと推測された。

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