(三田出版会・1994.6.発行)

「ロジスティクス革命―日本経済を変える新物流システム―」

 
                                 編:郵政研究所
 物流は今日、新しい局面を迎えている。従来の物流は輸送と保管を中心としていたが、生産、販売と連動して経営全体を支配する戦略の一環として機能するようになった。この方向がロジスティクスである。一方、わが国には物流の近代化を阻害する社会的規制などさまざまな問題が存在する。

 本書は、物流が抱える諸問題を解決する方策をさぐるとともに、ロジスティクスがめざす新物流システムの開発、ひいては近未来社会の姿を明らかにし、一般の読者の方々に理解していただくため編集した。世に出ている物流関係の出版物は、特定の会社の物流ノウハウを紹介するものが大半を占めており、物流全体を俯瞰した書は見当たらない。したがって、本書はビジネスマンのみならず物流関係者にも、物流環境とインフラストラクチャーの認識のためおおいに役立つと思う。

 単行本とするにあたっては、当研究所の研究官として参画していただいている物流・ロジスティクスの研究者を中心に、それぞれ専門の分野について執筆いただいた。

 第1章については、当研究所の客員研究官である矢澤秀雄先生に、・物流とは何か・その機能と変化を需要サイドから解説していただいた。第2章は、わが国の物流が・現在抱えている問題・をダイナミックにとらえ、当研究所の特別研究官である中田信哉先生に執筆していただいた。

 第3章については、「物流の未来」をテーマにして将来にわたる課題への挑戦、新しいシステムの開発、社会全体の方向などを、北澤博先生に解説していただいた。北澤先生には、東京L―NET構想研究会の発足時にいろいろ助言をいただいている。第4章は、「物流の進化」を技術・システム的な視点でとらえ、当研究所の特別研究官である高橋輝男先生に執筆していただいた。

 そして第5章は、当研究所がこのほど発表した東京における近未来の郵便物流システム「東京L―NET構想」の概要と、都市内物流インフラストラクチャーの方向を、特別研究官の海老原大樹先生に語っていただいた。

 東京L―NET構想は、21世紀には郵便事業が直面すると考えられる郵便物数の増加、都市内における交通渋滞、将来における労働力不足に対応するための一つの方策として提唱されたものである。以下に紹介するように、この構想は海老原大樹先生をはじめ多くの方々のご協力により完成したもので、1988(昭和63)年10月に「大深度地下を利用した郵便輸送システムに関する研究」としてスタートした。本研究を進めるにあたっては、土木、電機、車両、マテリアルハンドリング、経済等各界の専門家にご参集いただき、幅広い観点に立った検討が繰りかえされた。

 1990(平成2)年3月には概念設計を発表し、その後は郵便物数の予測、リニアモーター技術及び車両の軽量化に関する研究、ならびに地下構造物建設技術に関する研究等、要素技術の研究を進めた。詳細研究の過程では、当初の概念設計の内容にさかのぼる検討が再三行われるとともに、概念設計自体も見直され、最終的にはより精緻な研究成果を得ることができた。

 これらの結果をまとめて1994(平成6)年3月、5年間にわたる研究の集大成として最終報告書を発表した。

 平成5年度においては、9つの分科会、専門委員会、幹事会および全体委員会の合計12委員会を設け、総勢約50名を構成メンバーとする委員が、時間を惜しまぬ熱心な研究を行った。また、国内はもとより海外の物流あるいはリニアモーター技術の動向調査をするため、地下郵便輸送の先駆であるロンドンの郵便地下鉄等の調査にも委員会メンバーは意欲的に参加しており、利害関係を越えた熱意には敬服した。

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