「高齢化の中の金融と貯蓄」


             編著:高山 憲之(*1)、原田  泰(*2)
             執筆:宮尾 尊弘(*3)、大竹 文雄(*4)、高山 憲之(*1)
                麻生 良文(*5)、原田  泰(*2)、高田 聖治(*6)
                牧  寛久(*6)、大熊由紀子(*7)、堀  勝洋(*8)

 本書は、金融を収り巻く自由化・国際化などの環境変化を、高齢化という観点から整理し、高齢化
社会の政策課題を明らかにしようとするものであり、1992年4月に「高齢化社会の貯蓄」と題し
て当研究所において開催されたコンファレンスの報告及び議論の内容をとりまとめたものである。以
下、章ごとに紹介する。

第1章 人口の理論と将来推計

 高齢化社会の前提となる人口予測についてこれまでの議論や予測値を整理するとともに経済学的ア
プローチによる出生率の説明を試みている。

第2章 高齢化社会のシュミレーンョン

 まず将来の貯蓄率が低下しないという仮定の下で、高齢化社会が過去の資本蓄積によって若者が効
率的に生産することのできる豊かな社会である可能性をシュミレーンョンによって示す。

第3章 高齢者の遺産動機と貯蓄

 高齢者の貯蓄行動を遺産動機に焦点を当てて論じ、高齢者の貯蓄率が将来低下することが示唆され
ている。

第4章 公的年金と資本蓄積

 将来の貯蓄率に影響を与える変数として公的年金と公的負担に焦点をあてて論じ、ここでも将来の
貯蓄率が低下することが示唆されている。

第5章 高蓄積社会における資産保有と金融自由化

 資産選択の実態を明らかにするとともに、資産選択の観点からみた金融政策の在りかたを論じてい
る。

第6章 高齢者の生活実態と資産保有

 高蓄積社会の資産分布を明らかにし、すべての老人が貧しいとした現行の所得保証政策のままでよ
いのかという疑問を提出している。

第7章 高齢化とストック社会

 高齢者の実物資産に着目し、フロー化することによって高齢化社会のコストを引き下げ、活力ある
高齢化社会を創造する可能性を論じている。

 最後に、以上の議論を受げて総括的に討論した結果をまとめており、そこでは高齢化社会に必要な
サービスの効率化に焦点が当てられている。


*l 特別研究官(一橋大学教授)*2 第二経営経済研究部長 *3筑波大学教授 *4 大阪大学助教授 *5客員研究官(新潟大学助教授) *6 第二経営経済研究部研究官 *7 朝日新聞社論説委員 *8 社会保証研究所研究部長