第14号(日本評論社・1996.4.発行)

『高齢化社会の貯蓄と遺産・相続』

                   編者:*1 高山 憲之、*2 チャールズ・ユウジ・ホリオカ
                      *3 太田  清
                   執筆:*2 チャールズ・ユウジ・ホリオカ、*4 横田 直人
                      *5 宮地 俊行、*6 春日 教測、*7 山崎 勝代
                      *8 渡部 和孝、*1 高山 憲之、*9 桜井 俊行
                      *10 麻生 良文、*11 神谷 佳孝、*3 太田  清
                      *12 岩本 康志、*13 小家 康博 
 本書は、郵政研究所が1993年以来、研究会を設けて取り組んできた研究の成果である。本書の多くの章は、郵政研究所「家計における金融資産選択に関する調査」、総務庁統計局「全国消費実態調査」、日本経済新聞社「金融行動調査(レーダー)」等のアンケート調査の個票データを用いた分析である。近年、米国等でも、こうした個票データ(Micro Data)を用いた貯蓄行動分析がさかんに行われるようになってきているが、本書の特徴の一つは、こうした個票データを用いた点にある。
 本書の構成は、以下のようになっている。
 第T部「家計の貯蓄フロー」は、家計の資産蓄積・取崩し行動を、毎期のフロー(所得−消費)の面からとらえて分析したものである。人々はそれぞれのライフ・ステージに応じて、種々の目的で貯蓄を積み増し、また取り崩す。とくに、老後、引退後の生活に向けた貯蓄は重要であるが、前述のように、老後に実際に貯蓄を取り崩すのかどうか、あるいはどの程度取り崩すのかによってマクロ的な貯蓄率は違ってくる。
第U部「家計の貯蓄ストックと遺産・相続」は家計の資産蓄積・取り崩しをストックと遺産・相続などのような世代間移転の面からとらえたものである。遺産・相続についての情報、統計はいままできわめて限られていた。このような情報不足もあって、たとえば、マクロ的な世代間移転額の推計値などは、研究者のあいだで大きな開きがある。このような事情から、郵政研究所では、アンケート調査において人々の遺産に関する考え方(遺産動機)等を詳細に質問したが、そのアンケート調査の個票データを用いて、家計の遺産・相続の実態について分析したものである。
第V部「年金と資産蓄積」では、公的年金が、若年世代から高齢世代への世代間移転という性格をもつことなどによって、貯蓄率に、したがって経済成長率に影響すること等を分析したものである。

*1 特別研究官(一橋大学教授)、*2 特別研究官(大阪大学助教授)、*3 第二経営経済研究部長、*4 大臣官房財務部企画課、*5 日本生命保険、*6 米国イェール大学、*7 通信政策局地域通信振興課、*8 研究官、*9 研究官、*10 特別研究官(新潟大学助教授)、*11 研究官、*12 客員研究官(京都大学助教授)、*13 簡易保険局経営企画課