郵政研究所研究叢書


第13号(日本評論社・1996.3.発行)

『 No.19  日米家計の貯蓄行動』

編著者 チャールズ・ユウジ・ホリオカ/特別研究官 浜田浩児/第二経営経済研究部長

 日本の家計貯蓄率の国際比較においては、米国との比較に焦点が当てられることが多く、日米の家計の貯蓄水準や貯蓄行動についてさまざまな研究が行なわれている。これらの研究にとって、貯蓄の目的や遺産についての考え方などの意識の面も含めた調査を行なうことの意義は大きい。しかし、米国で貯蓄意識に関する調査があまりなされていないこともあって、日米同時に同一の調査内容で、家計の貯蓄行動や貯蓄意識についての総合的な調査が行なわれたことはなかった。

 郵政研究所では、こうした総合的な調査の初の試みとして、1996年の1月から3月にかけて、日米両国の世帯を対象とする「貯蓄に関する日米比較調査」を実施した。本調査は、日米の家計の貯蓄や遺産・相続に関する考え方、資産・負債の実態などについて、日米同一内容の調査票でアンケート調査を行なったものである。また、郵政研究所では、日本については、同様のアンケート調査を1988年から2年ごとに「家計における金融資産選択に関する調査」として実施している。

 これらのアンケート調査の個票データを用いて、日米の家計について貯蓄目的別の貯蓄額の推定をはじめとする貯蓄・遺産動機の分析を行ない、それにもとづいて両国ともライフ・サイクル・モデルの適用度が高いという結論を示したことが、本書の最大の特徴であり、もっとも重要なポイントである。

 また、日本の家計貯蓄率は米国よりかなり高いといわれるが、今後については、高齢化や社会保障給付費の増加に伴う家計貯蓄率の低下が指摘されることが多い。本書では、この点についても、高齢化の下での社会保障と家計貯蓄の関係の分析を行なっている。