(第6号 1995.3.発行)

『生命保険需要と遺産動機』

                         客員研究官(京都大学助教授) 岩本 康志
                           第二経営経済研究部研究官 古家 康博

 首都圏に居住する約1,300人の個票データを用いて、本稿は、生命保険需要が個人の遺産動機によって説明ができるかどうかを検討する。生命保険需要関数の推定によれば、遺贈可能資産の増加は他の変数が一定のもので、危険保険金を0.1弱の割合で減少させる。家計は生命保険を購入することによって遺産額を望ましい水準に調整しているという仮説は弱く支持されるものの、その調整は完全ではない。また、本稿では、個人の生涯総資産が遺贈可能資産と遺贈不可能資産にどのように配分しているかの推定もおこなった。その結果、遺贈可能資産は総資産の5割、危険保険金は遺贈可能資産のうち約2割を占めていることがわかった。