(第6号 1995.3.発行)

『社会資本の地域間配分』

―生産関数と費用関数による推計―

                       特別研究官(明治学院大学助教授) 三井  清
                           第二経営経済研究部研究官 竹澤 康子
                                    研究官 河内  繁
 社会資本の生産力効果について、地域データを用いた実証分析としてはMera(1975)、Munnel(1990)、吉野・中野(1994)、浅子ほか(1994)などいくつかの生産関数に関する計測が蓄積されてきている。
 本稿では既存の研究で残された問題のなかから、次の2つの問題を実証的に検討する。第1は、ある地域の社会資本が他地域の生産に対して及ぼすスピル・オーバー効果を考慮した生産関数を計測する。その計測結果から、都道府県ベースの地域データを用いる場合にはある地域の社会資本がその他の地域の生産に貢献しているというスピル・オーバー効果の存在が確認された。また、他地域の社会資本を明示的に考慮した計測では、生産の社会資本弾力性の値は0.2から0.25程度であった。さらに、その結果に基づいて推計される各地域の社会資本の限界生産性は、都市圏で高く地方圏で低いという地域間格差が存在するという結果が得られた。
 第2は、生産関数と双対関係にある費用関数から導かれる各生産要素のシェア関数を計測する。生産関数の計測から得られた生産の社会資本弾力性の値と同様の値が、そのシェア関数の計測結果からも得られた。また、労働と民間資本が補完的な生産要素であるという結果が得られた。さらに、ある地域の社会資本を増加させると、生産が増加する間接効果まで含めた場合には、その地域の労働需要と民間資本需要を増加させる効果があるという結果が得られた。