郵政研究レビュー


                                            (第7号 1996.7.発行)

『人的資産、相続資産と遺産動機』

                        特別研究官(一橋大学教授) 高山 憲之
                        特別研究官(新潟大学助教授)麻生 良文
                        研究官           神谷 佳孝
 本稿の目的は、郵政研究所で行ったアンケート調査(「家計における金融資産選択に関する調査」、調査時期は1992年12月)をもとに、遺産動機の決定要因を探ることである。同時に家計の貯畜行動を説明するモデルとして、ライフサイクルモデルが適切なのか、あるいはBarro型の遺産動機モデルが適切なのかという問題に答えることである。
 本稿で明らかになった点は次のとおり。(1)相続の経験や予定、持ち家、実物資産保有額と遺産動機の間に有意な関係がある。(2)probit modelの推定によると、実物資産の平均値の1%ポイントの増加は、遺産動機のある確立を3.1%ポイントから6.7%ポイント増加させる。(3)人的資産や年金資産を含んだ総資産と遺産動機の間に相関は認められなかった。人的資産や年金資産、金融資産についても相関は認められなかった。(4)クロス表分析では高年齢層ほど遺産動機を持つ割合が高いという結果が得られたが、probit分析ではほとんど年齢差は認められなかった。(5)職業差は自営業主が遺産動機が強いようである。