(第7号 1996.7.発行)

『公的年金・税制・人口高齢化と資本蓄積』

                         特別研究官(新潟大学助教授) 本多 佑三
 本稿の目的は、人口の高齢化、公的年金制度による世代間所得移転、公的年金保険料徴収方式の違いが貯蓄率や資本貯蓄に与える影響についての数量的分析を行うことにある。この目的のために、ライフサイクルモデルを前提にした世代間重複モデルを作成しシュミレーションを行った。
 シュミレーションの結果をまとめると次の通りである。第一に、人口の高齢化により今後貯蓄率が低下していくが、労働人口の減少により資本労働比率は上昇する。第二に、賦課方式の年金制度は資本蓄積を阻害する。公的年金制度が最初から存在しないか、あるいは完全積立方式で運営されていた場合に比べると、産出量水準の低下は高齢化のピーク時には7%から15%にも達する。第三に、賦課方式の年金制度の保険料徴収方式の違いを比較したところ、資本蓄積の観点からは支出税が最も望ましく、所得税が最も望ましくなく、労働所得税はこれらの中間に位置する。第四に、今回のシュミレーションでは予期しない徴税方法の変更を想定したために、変更時に世代間移転を伴っていた。世代間移転を伴うケース、伴わないケースを含めて、今後この点についてはさらに研究を深める必要があるだろう。