(第5号 1994.3.発行)
特別研究官(東京工業大学教授) 肥田野 登 東京工業大学大学院 佐々木俊一 第一経営経済研究部主任研究官 稲葉 茂 研究官 足立 聡オフィスの分散化・分割化を考える上で、コミュニケーションの制約を明らかにすることは極めて重要である。
日本では、情緒的関係・信頼感といった人間関係が重視され、社内で必要以上の面談コミュニケーションがとられている。このことが、オフィス分割の障害となっていると考えられる。
そこで、コミュニケーション手段に関しての意識調査を行い、その選択行動を非集計ロジットモデルによって分析した。その結果、社外コミュニケーション、社内コミュニケーションとも、情緒的関係・信頼感といった人間関係が影響を与えていることが明らかになった。特に、社内コミュニケーションでは、情緒的関係が強いときには面談が選択され、逆に、信頼感が強い時には他のメディアが選択される。
現状では、従業員は本社への出張が頻繁であればあるほど、ちょっとしたトラブルでも本社へ出張する(面談が選択される)。これに対して、就業者が情緒的関係を重視する度合いが低下すると出張は抑制される。人事評価や業務上の決定から情緒的関係の影響を除くことにより、面談の必要性が減少する。これによって、東京のオフィスを分割化するための方向性の一つが示されたと考える。