(第5号 1994.3.発行)

Deposit Insurance, Moral Hazard, and Market Forces in the United States and Implications for Japan

                     海外客員研究官(ネバダ・レノ大学)Thomas F.Cargill
 この論文は1980年代に預金保険とモラルハザードに関して米国の貯蓄金融機関が経験した諸問題をサーベイしたものである。

 まず、歴史的観点から1980年代後半にS&L(貯蓄貸付組合)が破綻する中での預金保険の発展及びその果たした役割について論点を考察した。そして、1991年連邦預金保険改革法を含め、預金保険の問題に対して採られた主要な立法上の措置について検討を行った。次に、1989年と90年に露見し始めた銀行の問題についても検討を行ったが、この論文を執筆した1992年末以降の出来事を見ると、継続的低インフレと順イールドカーブのおかげで米国の銀行や他の貯蓄金融機関は積極的に債権を償却しバランスシートを改善することができたために、この問題は深刻な事態には至らなかったようである。

 また、この論文では日本の金融自由化についていくつかのインプリケーションを示した。日本の規制当局は米国の状況は特殊ケースであって日本には無関係だと簡単に片づけることはできない。事実、日本の預金保険機構は米国におけると同様に不安定要素を抱えているし、現在の日本の不良債権の問題は、日本は米国の金融問題の綿密な研究から多くのことを学ぶことができることを示唆しているのである。

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