第一経営経済研究部長 安住 透 研究官 村尾 昇 研究官 北島 光泰
ジャスト・イン・タイム物流は、その進展に伴って、交通渋滞、環境汚染などの深刻化の問題や物 流コストの増大によるメーカーや卸売業者の経営圧迫の問題などが指摘されているところであるが、 その実態や本質は十分に把握されているとはいいがたい。 ジャスト・イン・タイム物流は、運輸政策審議会答申(平成2年12月)においては、労働力不足 の観点からその見直しが必要であるとさ構造審議会・中小企業政策審議会の報告書(平成3年6月) ではなジャスト・イン・タイム物流と、システム化された真の意味でのジャスト・イン・タイム物流 とに分けてとらえる必要があるとされている。 沿革的にはジャスト・イン・タイム物流は、アメリカの食品業界やドラッグ業界で採用されていた バラ出荷方式即ち「小口配送」と、我が国の自動車産業における部品の調達方式としてのジャスト・ イン・タイム方式即ち「多頻度配送」の2つの方式をモデルとし、大手コンビニエンス・ストアがそ れらの本来的に次元の異なる物流形式を結合して成立したものである。 郵政研究所では、平成4年、加工食品を例にとり、加工食品問屋、トラック業者及び食料品製造業 者を対象にアンケート調査を実施した。この調査結果から、ジャスト・イン・タイム物流を「配送の 多頻度化」ととらえれば、それは情報化の進展にかかわりなく加工食品の全分野に及んでいること、 しかしながら多頻度配送には、「小口」配送と「大口」配送があり、問題にされているのは、主とし て小口で、より本質的には、制度的・システム的に条件が整わないままに小口化したことにより積載 効率が低下していることであること、などが明らかになった。 以上の分析と調査結果から、ジャスト・イン・タイム物流は、「多頻度配送」と「小口配送」の2 つの側面に分けてとらえる必要があり、より構造的な問題は交通規制、環境規制などの各種の社会的 規制が強化されていることから、市場機構を通じての最適水準の実現が期待できる多頻度配送ではな く、制度的・システム的に実現の条件が阻害されている効率的な小口配送の実現にあると考えられる。 そして、輸送形態を従来の貸切り輸送から積み合わせ輸送へ移行するためには、積み合わせ事業者 の共同仕分け施設である物流センター、流通センターなどが港湾、空港などと並んで国民生活上の 「社会資本」としてとらえられ、社会的に整備されなければならない。