『郵政省電子公文書館システムに関する研究調
査報告書(中間報告書)』


                         情報システム研究室主任研究官 渋谷 文夫
                                    研究官 佐藤 義仁

1 背景と目的

 我が国の情報化は急激なテンポで進展しており、企業活動をはじめとする社会のあらゆる側面に高
度情報化の波を浸透させてきている。

 官庁を代表とするオフィス事務部門においても、数値等の定型的なデータに関しては電子化され、
コンピュータ利用によるデータベース構築から、迅速、大容量処理が可能となり、収集・蓄積・検索
・再活用等の一般的業務処理がなされてきているが、オフィス事務部門で作成される多量の文書類(
ドキュメント)については、文書類の量的膨大さ、莫大な経費負担を伴うシステム構築等種々の問題
から、データベースシステムの構築はいまだ一般化されていない。幸い、昨今の技術進歩は著しく、
上記課題は除々に解消されてきており、システムの検討・構築が待望されている。

 一方、2万有余の局所を有する郵政省においても、「郵政省電子公文書館」の早期構築が望まれて
おり、広域的な巨大組織における『文書類データベースシステム』の最適像について、迅速なる検討
及びその結果の早期提示が待たれている。

 本研究調査は、非定型部門の情報化対応が急務であるという観点に立ち、行政官庁のオフィス事務
作業の基本を成す文書類の保存・再利用に関して、文書情報検索システムを巡る省内外の動向をとら
えるほか、システムに望まれる条件等の洗い出しを行い、もって、郵政行政における文書流通の円滑
化を促進する 『文書類データベースシステム』の構築に資するものである。

 なお、本研究は郵政研究所情報システム研究室と官房文書課との共同研究である。

2 進捗状況

 本研究調査は、(1)小規模パイロットシステムの検討・導入、容量高速検索システムの検討、(
3)将来システム(全国展開)のイメージ化の三構成で進めている。

 これまでのところ、第1段階まで完了したところであるが、試行運用に向けた基礎調査は下記のよ
うな手順で行った。

(1) 「郵政省公文書館システム」に望まれる条件

 まず、省内における情報化環境を明確にするために、省内のデータベースの推進状況やOA部会の
動向をとらえたほか、「郵政省公文書館シスナム」に望まれる条件の洗いだしを行い、システム構築
上の着眼点としてデータの互換性、利用者の操作性、運用者の作業負担の軽減、検索性能、図表処理、
ネットワーク化等の観点に留意してシステム構築を進めることが肝要であることを確認した。

(2) 他省庁の動向

 次に、文書類のコンピュータ化に必要な文書類の電子化の効果的方法を検討するため、他省庁にお
ける先進的な事例から類似システムの抽出を行ったが、他省庁の動きとして注目されるシステムとし
て、特許庁ペーパーレスシステム及び総務庁統計情報データベースシステムを取り上げた。この2シ
ステムを概観すると以下の通りである。

1. 特許庁ペーパーレスシスナム

 特許庁ペーパーレスシステムは、年間約70万件という大量の出願に対し、受付・審査・審判・及
び登録に至るまでを6台のコンピュータと約1,000台の端末機をLANで結ぶ構成であり、現在
は構築途上にある。

 システムの特徴としては、庁全体としてのトータルなデータの電子化が行われ、かつ、オープンな
システムで、マルチベンダー構成であること、及び文字情報に加えて図・表等のイメージにも対応し
ているほか、公開・公示情報時に付与された文献番号や出願番号など多種多様の検索ができること。

2. 総務庁統計情報データベースシスナム

 総務庁統計情報データベースシスナム(SYSMAC)は、保有するデータを各省庁等にオンライ
ンで提供するシステムで、平成元年4月より運用を開始している。

 システムの特徴としては、国税調査等データの性質を重視し、公表日時に対応した提供タイミング
を採っているほか、初心者にも利用しやすい機能として、メニュー選択方式や文字列検索方式等の機
能を有している。また、一部のデータに関してはワープロ等へのタウンロ−ドが可能で、データ加工
の要求にも応えられる。

(3) 高機能文書情報検索システムの機能比較

 公文書のデータベースとして適している方式等を検討するに当たっては、市販の高機能文書情報検
索システムの中から、公文書館システムへの適応が見込まれるシステムについて機能比較を行ってい
る。

 公文書館のデータベースシステムとしての機能を満足し得る可能性のある管理ソフトとして4種類
を比較したところ、公文書館システムとして重視している「人手によるキーワードの登録作業の無い
システムであること」や「高速検索ができるシステム」という面で要求に合致していることが分かっ
た。

(4) 小規模パイロットシステムの試行運用

 以上、上記の基礎調査を通し、小規模パイロットシステムとして望ましい方式を試行システムとし
て導入しており、試行連用の中で利用者の感触をつかみながら本格的なシステム構築のノウハウとす
る。

 なお、当該システムの構成要件及び構成は次のとおりである。

1. 小規模パイロットシステムの構成要件

(a) 文書の登録には、すでに電子化されている文書と紙文書とが存在する。電子化されている文
   書は、作成元のワープロ別にコンバートでき登録できること。電子化されていない文書は、活
   字印刷物についてはOCRを利用して登録できること。

(b) 文書の検索には、大量文書間をまたがっての検索が必要であり、そのために大容量の磁気記
   憶装置(光ディスク等)が接続できること。

(c) 文書の保存には、磁気記憶装置の障害も考慮し磁気テープとしてバックアップ保存すること
   も必要であり、磁気テープ装置等の周辺装置が接続できること。

(d) 電子公文書館システムは、将来的には自ら登録した文書だけでなく模範六法等を利用して作
   成文書の添付資料とすることを想定していることから、CD−ROM専用ディスクを接続して
   市販のCD−ROMが利用可能なシステムであること。

2. システムの構成

 上記システム構築要件を鑑み、電子公文書館小規模パイロットシステムとしてパソコンのシステム
を構築した(図1)。



3 今後の取組

 当面のシステムとしては、本省内を対象としたシステムで、諸機能として高速検索、イメージ処理
などに対応できるシステムの構築を第一の目標としているが、将来は全国の郵便局までの広範なネッ
トワークデータベースが必要であることから、今後は、小規模パイロットシステムの試行運用結果を
踏まえて、文書類データベースとして最適な技術方式を絞り込むとともに、本省内に敷設される予定
の本省LANの機能・性能、及び構築時等を勘案して、本格的な次期データベースシステムとして、
本省内大容量高速検索システムの導入を検討していくことを課題としている。