『海外主要国における情報通信の動向に関する調査研究』


                           通信経済研究部主任研究官 木村 順吾

 本調査研究においては、欧米主要4か国(米国・英国・ドイツ及びフランス)における最近の情報
通信政策の動向を取りまとめている。

〔米 国〕

 AT&Tに対する料金規制については、1989年3月の裁定により従来の公正報酬率規制に代わ
って料金上限規制が導入されているが、1991年8月の裁定により規制対象範囲が緩和されつつあ
る。

 地域電話会社(LEC:Local Exchange Carrier)に対しては、1992年9月、競争的アクセス
提供事業者(CAP:Competitive Access Provider)施設のコロケーション(局内設置)が義務づ
けられ、地域通信網の競争促進政策が講じられる一方、CAPとの競争の進展も踏まえ、相互接続料
金におけるトランスポート料金部分について、LECの料金に限定的ながらも柔軟性が認められてい
る。

 CATVについては、1992年10月のCATV法「1992年ケーブル・テレビジョン消費者
保護及び競争法」により、CATV料金に対する規制強化が講じられることとなっている。また、1
992年7月16日の「ビデオ・ダイヤルトーン裁定」により、フランチャイズ内でビデオを独占す
るCATVに対する新競争圧力としてLECによるビデオ伝送(ビデオ・ダイヤルトーン)を認め、
お互いに地域独占事業者であるCATV/LEC間の競争を誘発しようとしている。

〔英 国〕

 全国規模の基本電気通信サービスの提供をBTとマーキュリーの2社に限定する複占政策が市場競
争を十分に形成し得なかったことを「複占政策の見直し及び政策白書」において反省し、CATV・
電力・鉄道事業者等による新規参入を認め、競争促進政策を大きく転換しようとしつつある。

 BTの料金規制については、1991年7月25日の免許条件修正でRPI−6.25を採用し、
更に1992年6月の「BTの料金についての将来規則」で価格上限規制のXの値を7.5に強化し
つつ価格上限規制方式を1997年7月31日まで継続することとしている。

 また、相互接続料金問題については、1991年7月3日のOFTEL文書でBTの加入者回線部
分の赤字に対する競争事業者の補填を認める一方、同時に発表した「分計及び相互接続についての政
策」文書では相互接続料金の会計的監視強化を宣言している。

〔ドイツ〕

 ドイツでは、1989年に従来の国営形態を三公社化する第1次制度改革を行っているが、東西ド
イツ統一に伴うDBPテレコムの自己資本比率悪化への対処、DBPテレコムが国際電気通信市場へ
参入する上での制約の撤廃、DBPテレコム内部の効率性向上による市場競争力強化の必要性が共通
認識とされていること等を背景に、にわかに浮上してきているテレコム民営化の第2次制度改革論議
の動向を紹介している。

〔フランス〕

 フランスでは、1990年7月に成立した郵電公共企業体法により、1991年1月1日に郵政事
業を運営する「ラ・ポスト」と電気通信事業を運営する「フランス・テレコム」の公法人格を持った
公共企業体が2社設立されているが、1990年代のフランスの電気通信分野における競争ルール等
を定めた電気通信事業規制法(1990年12月29日)の内容を紹介している。

 フランス・テレコムと郵電省規制局(DRG)との関係、公共サービス提供の使命、事業計画協定
に関する国との間の締結の必要性が規定されている。特に料金規制に関しては、国とフランス・テレ
コムとの間の事業計画協定では、社会契約型の価格上限規制を採用し、「国内総生産(PIB)−3
%」の算式が適用されることとされている。