『諸外国の次世代情報通信サービス及び次世代情報通信網構築政策の動向に関する調査研究』


                           通信経済研究部主任研究官 木村 順吾
 本報告書は、米国を中心として英国、フランス、ドイツ及びECにおけるネットワーク高度化の現
状及び次世代インフラストラクチャ整備方策の動向についてまとめた上で、次世代情報通信網構築政
策の国際比較を行っている。

〔米 国〕

 米国では、AT&T分割とその後の競争進展に伴い、特に長距離通信分野ではネットワークの拡大
・整備が進んできており、IXCの光ファイバ化は1980年代後半以降大幅な伸びを示してきてい
る。しかしながら、既に建設のピークに達した模様であり、ディジタル化に関してはAT&Tが19
90年末に、MCIが1991年末に完了している。

 また、地域通信においても、CAPの新規参入によりLECの独占力は低しているが、この刺激が
むしろCAPとの競争対応のためにディジタル化を促す結果となっており、光ファイバ敷設は年率
30%以上の伸びが見られる(ただし、このうちの大部分が既存メタリックケーブルからの更改と思
われる。)。

 次に、N−ISDNは接続性、サービスエリアの問題等もあって予想に反して需要が伸びていない
が、互換性確保やサービス全国化の動きが進行しており、徐々に需要も拡大すると見込まれる。B−
ISDN(家庭用)は各LEC別にFTTH実験が開始されているが、大部分は通常の電話サービス
の提供に留まっている。

〔英 国〕

 英国のN−ISDNは、CCITT標準化以前にサービス開始された結果、英国独自の規格に拠っ
ていたが、現在では国際標準規格に変更されつつある。加入者回線の光ファイバ化はBTによる合計
301ヵ所の事業所及び住宅を対象にした実験が行われているが、この他には特段の計画はない。ま
た、1991年3月の複占政策見直し白書の結果、CATVその他の新規事業者の参入が今後のイン
フラストラクチャに影響を及ぼすものと考えられる。

〔フランス〕

 フランスでは、公衆網はフランステレコムの独占であり、ネットワーク高度化は当然にフランステ
レコムによって遂行されている。ディジタル化は1970年代には遅れていたが、その後10年間で
急速に進展している。また、電気通信を国家の優先項目と位置づける国家計画及びノラ・マンク報告
を受け、高速広帯域通信サービスの開発・提供が積極的に行われている。N−ISDNは国立電気通
信研究センターの主導で行われており、商用サービスとしては1987年末より開始されている。加
入者回線の光ファイバ化については、広帯域映像通信サービスの実験が1984年から行われている。

〔ドイツ〕

 1990年10月の東西統一後の現在のドイツの課題は、旧東独地域の電気通信事情を旧西独地域
並みに引き上げることである。旧西独の中継回線については既に1990年で80%がディジタル化
されているが、旧東独でも1992年末には90%がディジタル化する見込みである。

 高速広帯域通信サービスとしては、N−ISDNが1989年から商用化されているが、1993
年中には旧西独ほぼ全域、1995年までに旧東独全域がカバーされる見込みである。加入者回線の
光ファイバ化実験は1983年から積極的に着手されている。旧東独地域でも電気通信サービス拡充
計画にあわせて、1993年よりFTTCでネットワーク構築を開始し、120万世帯加入者回線を
光ファイバ化する予定である。

〔E C〕

 欧州各国は個別にネットワーク高度化に取り組んでいるほか、ECとしても共同の研究開発、広帯
域通信ネットワークの導入を計画している(RACE計画、ESPRIT計画、EUREKA計画)。