『情報通信の産業連関分析に関する研究調査報告書』


                             通信経済研究部研究官 竹下  剛
                                    研究官 田中 明宏
 本研究は、我が国における近年の急速な情報化の進展の中で、その中心的な役割を担っている情報
通信産業の産業構造を解明すること等を目的とし、主に産業連関分析の手法を用いて分析を行った。

情報化の進展と情報通信産業構造(第2章)

(1) 1980年から1989年の国内生産額の伸び率をみると、情報通信産業は、2.45倍と他の
 産業に比べて極めて高い。情報通信産業の中でも、特に情報関連サービス業と情報通信機器製造業
 の増加額が大きく、情報通信産業全体の増加額の8割を占めている。また増加率ではやはり情報ソ
 フト業などの比較的新しい産業部門の増加率が高い。

(2) 企業組織内部での情報化の進展を表す組織内情報通信活動も、同期間に2.43倍の高い伸び率
 を示している。

(3) 1989年の中間投入比率をみると、通信業、情報通信機器賃貸業、情報ソフト業は全産業の平
 均より低く、これらの産業の付加価値率が高いことを示している。ただし、通信業と情報通信機器
 製造業の中間投入比率は近年上昇(すなわち付加価値率は低下)する傾向にある。また中間需要比
 率については情報通信産業に含まれる産業は全産業の平均より高いものが多く、情報通信産業が生
 産した財やサービスは最終需要よりも中間財としての需要に多く向けられており、かつこの傾向は
 さらに強まってきている。

(4) 各情報通信産業の影響力・感応度係数をみると、通信・放送産業は他産業への影響力・感応度と
 も全産業の平均を下回っている。近年は影響力が弱まる一方、感応度は高まる傾向にある。情報ソ
 フト・情報関連サービス産業では、情報ソフト産業の影響力・感応度係数がいずれも平均を下回る
 一方で、情報関連サービス産業は感応度が高い部門と低い部門に2分されている。近年は特に情報
 サービス業、ソフトウエア業の感応度係数の伸び率が高い。情報通信支援財産業は影響力は強いが
 感応度は低い。近年は特に感応度係数の伸び率が高い。

(5) 電気通信産業の単位構造をみると、各種電気通信産業とも、サービス産業との相互依存関係が強
 く情報通信産業相互の依存関係も強いという点で類似しているが、国内第2種は情報関連サービス
 業や通信業といった情報通信産業内部の相互依存関係が特に強いこと、国際電気通信は通信業同士
 の相互依存関係が強いこと、その他の電気通信サービスでは一般製造業との結びつきが強いこと等
 それぞれの特徴が見られる。また近年は情報通信産業同士、あるいはサービス産業との相互依存関
 係が強まり、他の非情報通信産業との関係が弱まる傾向にある。

NTTの設備投資の経済波及効果と電気通信サービス料金改定の効果

(第3章)
(1) NTTの平成4年度の設備投資額は約1兆8千億円であるが、この設備投資による経済波及効果
 は、約1.9倍の3兆4千億円に及ぶ。このうち生産誘発額が最も大きいものは電気通信機器製造
 業の約1兆6千億円、次いで一般製造業の約8千2百億円、一般サービス業の約5千5百億円であ
 る。

(2) 1985年の価格指数を100とすると、1989年までに電気通信料金改定によって国内第1
 種電気通信は全産業平均の価格指数を約0.1、国際電気通信は約0.06低下させる効果があっ
 た。

(3) 国内第1種電気通信の料金改定は、国際電気通信、民間放送、国内第2種電気通信等のコスト引
 下げに大きな影響を与えている。同じく国際電気通信の料金改定は、公共放送、民間放送、ニュー
 ス供給業等に大きな影響を与えている。また、国内第2種電気通信の料金改定は、国際電気通信、
 ニュース供給業等に大きな影響を与えている。

情報通信産業の地域産業連関分析(第4章)

(1) 情報通信産業の関東地域への集中化が、他の産業の集中化と比較して顕著である。

(2) 情報通信サービス産業と情報通信支援財産業の各地域での構成比をみると、関東・近畿地域では
 両産業の構成比が高く、中部・中国では両構成比とも低い。また、東北地域は情報支援財産業の構
 成比が高く、四国地域でも比較的高い。北海道・九州・沖縄地域では、情報通信サービス産業の縦
 成比が比較的に高い。

(3) 国内電気通信は全地域において最終消費依存型であり、地域内における最終消費需要の増加が国
 内電気通信部門の生産を大きく誘発する。

通信資本の日本経済に与える影響(第5章)

(1) 通信資本は着実な伸びを示しているものの、社会資本全体に占める割合は減少してきている。

(2) 推定期間を通じての計測では、通信資本に関する国内総生産(GDP)の弾力性は0.197で
 あり、これは1989年の時点で通信資本10億円の投資によってGDPが24.8億円(ただし
 1980年価格での評価)増えることを示している。

(3) 弾力性は最近になって大きくなっており、通信資本生産性が高まってきている。