『物流システムの現状と今後の展望に関する研究調査報告書』


                           情報システム研究室研究官 樋口  憲
 郵政事業においては郵便番号自動読取区分機の導入等、早期から先進的なシステムの活用が図られ
てきたが、民間企業等における近年の物流情報システムの動向に関しては郵政事業としても学ぶべき
点が多い。そこで本調査では民間企業における物流情報システムの動向に関する研究調査を行ったも
のである。

 技術的な視点からとらえた場合、物流情報システムの大きな特徴としては、1.データの自動入力技
術と、2.ネットワーク技術の2点が重要な位置を占めることが挙げられる。

 物流情報システムにおける自動入力記述に求められる主な条件は、非接触読取で、読取方向の規則
性に縛られないこと、読取精度が高く、読取速度も速いこと、そしてコストが低いこと、が挙げられ
る。今日最も広く利用されているバーコード技術はこれらの条件を最も良く満たしている技術である
といえる。さらに、今後予想される各分野における物流サービスの高度化においては、内包する情報
量が多く、データの書換も可能で、しかも物理的形状も各種のものが利用可能なRF−IDが注目さ
れる。郵政事業においても、このRF−IDは郵袋の管理や、郵政局から郵便局への備品の配送管理
等、いろいろな分野への適用が考えられ、今後の応用研究が必要である。

 物流情報システムにおいてはデータの自動入力技術と並び、ネットワーク技術も重要である。特に
今後は企業等の組織間のコンピュータをつなぐ観点からEDI(電子データ交換)の進展が期待され
る。EDIの実施にあたって必要となる標準化されるべき要素(EDI規格)はOSIの7階層モデ
ルと同様に、一般的に4つの層に分けて整理される。欧米各国においてはEDIへの取組も進み、業
界標準だけでなく業際標準(国内標準)の制定とその実用化も実現しており、さらに国連においては、
欧米諸国が中心となって国際標準(UN/EDIFACT)も制定されつつある。しかし、我が国に
おいては欧米に比して国内標準の制定作業及びその利用の面では大きな遅れをとっているのが現状で
あり、さらに前記国際標準への取組も遅れている。このような中、日本電子機械工業会(EIAJ)
が制定した業界標準(EIAJ標準)が注目を集めている。同業界では既に約750社がこの標準に
基づいて受・発注業務関連データについてのEDIを実施している。さらに今後は物流業務への適用
も目指しており、現在運送業者をも巻き込んだ実験を推進しているところである。

 郵政事業においては、ダイレクトメールを中心とする業務用郵便の増大に伴う引受郵便物数の日々
のぱらつき(業務負荷のピーク・ボトムの格差)が拡大している。効率的な要員配置や協力会を通し
てのスムーズなアルバイト調達を可能にするためには大口顧客の動向を事前に把握することが必要に
なってきており、多数の顧客とのネットワーク構築の観点からもこのEDIの動向は注視していくこ
とが重要である。