1994年3月:調―94―VI―01

『海外主要国における情報通信の動向に関する調査研究』

                            通信経済研究部主任研究官 木村 順吾
 本調査研究書は、主として1992年後半以降1993年後半までの欧米主要4か国(米国、英国、ドイツ及びフランス)における最近の情報通信政策と情報通信産業の動向を全般的に取りまとめている。このうち、特徴的な出来事は、次のとおり。

【米国】
 従来、自然独占性を前提に地域独占が保証されてきた地域通信市場にも、CAP、双方向CATV PCS、ワイヤレス・ケーブル、ブロードキャスティング等といった代替的新技術が登場し、他方、同様に地域独占であったCATV市場にも、電話会社のビデオ・ダイヤルトーン登場により競争の萌芽が発生しつつある。

 そして、地域競争の触発により、或いは従来の業務制約を克服するために、電話会社、CATV会社、娯楽会社等を横断的に連携・合併の動きが続発しているが、とりわけRHCがその中の主導的役割を担っている。

 政策当局も、積極的にこれらの地域競争を実効化させるために、拡大相互接続裁定、地域伝送裁定、ビデオ・ダイヤルトーン裁定等を講じてきている。更に、NII(全米情報基盤)構築を提唱するクリントン・ゴア政権では、情報スーパーハイウェイ投資を促進するための一策として、反トラスト法的な修正同意審決(MFJ)の見直しや、電話会社/CATV会社相互所有禁止の見直しが議論されている。

 料金規制に関して、FCCは非支配的事業者に対して裁量的に規制を差し控える非対称規制を行ってきたが、通信法違背判決を受けて、1993年8月裁定で、簡素化規制ながらも非対称規制を終焉させる画期的な政策転換を行った一方、支配的事業者であるAT&Tに対するプライスキャップ規制の見直し作業を進めている。

【英国】
 1991年3月の複占政策見直し白書以降、1993年5月までの間に約60件の申請がなされ、20件の新規PTO免許が付与された。無線利用の地域系通信事業者(アイオニカ)や衛星系通信事業者のほか、大ロンドン圏の環状高速道路内の光ファイバ網の提供を計画するCOLT、送電会社グリッド子会社のエネルジス等の固定地域系事業者が既に免許を得ている。英国国鉄系のBRTは、民間パートナー要件及び内部相互補助防止要件のため、免許取得が遅れている。

 BTに対するプライスキャップ規制に関して、免許条件修正の度に、規制対象項目の追加、包括的キャップのほかに個別料金値上げ限度(サブキャップ)の追加、X値の強化(1993年8月以降は7.5%)が行われてきている。

 相互接続に関して、Oftelは、1991年7月、イコールアクセスの実施、市場占有率の推移に応じて、BT加入者線赤字の補填についての問題を裁定した。しかしながら、本件が競争条件の根幹に関わるものであることから、相互接続に対する会計的監視を強化することとしている。

【ドイツ】
 1989年に公社化されていたDBPテレコムについての民営化問題が、1993年初夏に連立与党(CDU・CSU)/野党(SPD)間で合意された。郵電3事業体それぞれを株式会社化すること、連邦政府が、持株会社を通じて、DBPテレコム株式の過半数を保有すること等の合意内容となっている。そのほか、1993年7月、DBPテレコムは、D網(ディジタルセルラー)でマンネスマンと競争している移動通信部門を、DeTeMobilとして分社した。

 料金規制に関して、1993年1月からDBPテレコムがD網事業者に提供するサービスの料金に、次いで1995年1月からDBPテレコムの電話サービス料金にも、それぞれプライスキャップ規制方式を導入することとした。但し、規制方式の変更にもかかわらず、料金リバランシングを求めるDBPテレコムの料金体系改革案は、料金全般の低廉化を要求する郵電省との調整難航により、進捗していない。

【フランス】
 1993年4月の保守連合新政権の誕生を契機に、フランス・テレコムの民営化議論が浮上した。この新政権は、ロンゲ産業郵電貿易大臣からの諮問により国務審議官ダンドロ氏が提出した報告書(ダンドロ・レポート)に基づき、1993年8月にフランス・テレコムの民営化を閣議決定したものの、民営化による公務員身分の喪失危機感から発生したストライキを踏まえて、1993年11月、当初の予定では1994年第1四半期に提出されることとなっていた民営化関連法案の提出を見送り、利害関係者の意見を更によく聴取し直すこととした。

 本来、「1991〜1994年事業計画協定」により1992年夏に実施される予定であった料金リバランシングは、政府の政治的判断により延期されていたが、漸く1993年12月〜1994年1月に実施された。その主な内容は、単位料金区域の拡大、加入区域規模に応じた基本料級局区分の統合・値上げ(一律45フラン)、市内通話料の課金秒数短縮と国内長距離通話料及び国際通話料の値上げ等となっている。

本文書[rtf形式]の転送


HomePage