1994年9月:調―94―IV―01

『企業における情報システムの実態分析とシステム投資に関する調査研究報告書』

                          情報システム研究室主任研究官 渡辺 仁哲
                                     研究官 北島 光泰
 本調査研究は、企業で最も重視されているシステムの現状を捉えるとともに、そのシステムの成否状況から、システムを成功させるにはどうしたらよいかを考察した。

 また、併せて情報投資化動向について取りまとめたものである。

〔情報システムの開発・運用を成功させるための要件〕

(1) 情報システムの目的の明確化と事前評価の重要性
  利用者との事前の議論が不十分で、目的が絞り込まれていないため、本当に役立っているのか評価・判断が難しい状況にある。情報システムの目的を明確にしたうえ、開発期間の長期化から、システムが環境の変化に対応できないことのないよう、プロトタイプ作成による事前評価が効果的である。

(2) 組織について
  システムの導入・開発に向けては、利用部門主導型がうまくいくケースが多い。また、経営トップの関わりなど、情報化推進役が必要である。なお、情報システム部門は、技術的支援、部門間の調整など側面からの支援を行うことが肝要である。

(3) 利用率を上げる教育効果
  文書の配布・回覧などより、直接的な教育効果が大きい。また、利用部門内に組織をつくること、利用法の勉強会等研修・教育機会を設けるといった利用部門の積極性が求められる。さらに、事前準備により、使用上の問題点などはないかのヒアリングが効果的なほか、利用対象者を限らない、よりオープンなシステムが良い結果になっている。

(4) 表計算ソフトを用いた分析とシミュレーション
  導入目的と対策課題や業種との関係、及び効果に影響を与える要因等を分析した。   業種におけるシステム導入目的のキーとして、製造業では取引先との関係強化及びユーザーに近い部分の充実に係わる目的のウエイトが高く、流通業もほぼ類似している。また、金融業ではよりユーザーに近い部分の充実と、社内の管理体制の充実に係わる目的のウエイトが高いことが分かる。

 一方、数量化2類分析により、予想以上の効果を引き出すための変量を求めたが、そのなかで、教育強化、利用対象、参画部門などの影響が高いことが分かる。

  なお、当該分析モデルを、単なる予測だけに用いるのではなく、システム企画・導入/開発・運用のライフサイクルのなかでのチェックリストとして活用すれば、身近なツールで効果を上げることは可能である。

〔情報システム部門の変化への対応〕

 情報システム部門もこの不況においては、リストラの対象とされており、組織の変化ばかりではなく、担当業務・位置づけの変化が一部にみられる。

 今後、経営に参画していけるか否かが、情報システム部門にとって重要であり、今までのような開発だけの閉鎖的システム部門では、部門が縮小/消滅していくだろう。そのためには、技術的な問題と併せて、業務、経営感覚をベースにした問題意識を持ち、情報の選別と提供、調整能力を持つことなどが重要であろう。

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