1995年11月:調―95―IV―02

『マルチメディアサービスの利用動向に関する研究調査報告書』

                       情報通信システム研究室主任研究官 岡田 裕二

                                    研究官 國井 昭男
                                    研究官 菊池 信輝
 デジタル技術により文字・音声・画像等を統合的にインタラクティブに通信ネットワークを介してやりとりできる「マルチメディア」サービスについては、これまで、インフラ面の整備及び経済効果について多くの研究がなされており、また、マルチメディア業界においては、ビデオ・オン・デマンドやPHS等の個々のマルチメディアサービスについてのマーケットやニーズについて調査がなされているところである。
 マルチメディアサービスの普及に向けては、具体的なマルチメディアアプリケーションの検討として、ユーザが求めている機能を十分に把握して、ユーザサイドに立ったアプリケーションの検討を行う必要がある。
 本調査は、既存のマルチメディアサービスの調査及びマルチメディアサービスを提供しようとしている事業者へのインタビューから、マルチメディアサービスにおける現状と動向を取りまとめるとともに、生活者アンケート調査及びパソコン通信ユーザアンケート調査により、生活者がマルチメディアサービスのどのような機能に利用意向があるかについて調査を行ったものである。
 本調査研究の結果、事業者側は各種のマルチメディアサービスを開発し、積極的に事業展開を図ろうとしていること、行政サービス、遠隔医療等のサービス以外では、一般の生活者における認知度や利用意向はありま高くないが、パソコン通信利用者などの先進的ユーザにおいては利用意向が高いこと、しかし、マルチメディアサービスに対する追加的支出によるマルチメディアサービスに対する価値の評価では一般ユーザも先進的ユーザもほとんど差がないこと、等が確認できた。
 マルチメディアサービスの普及のためには、低い認知度を高め、多くのユーザに関心を抱いてもらうことが必要である。しかし、本調査結果によると、ユーザが高める機能と、マルチメディアサービスの付加価値を高める機能は必ずしも一致しておらず、潜在的な需要喚起のためには、ユーザが真に関心を持っている機能を持ったマルチメディアサービスを投入し、認知の形成から地道に普及過程を経ることが必要である。