1996年6月:調―96―Y―01

『定量的方法による通信トラヒックの特性分析に関する研究調査報告書』

                              通信経済研究部研究官 遠藤浩二郎
1 平成6年度国内電気通信トラヒックの現状
 1章では、平成6年度における加入電話及び自動車携帯電話のトラヒックデータの整理を行い、その特徴を分析した。
 最も基本的なサービスとして普及している加入電話については、加入数の増加率が年々減少してきており、平成6年度には1.9%となった。
 平均通話時間は、東京都、大阪府の2大都市の周辺地域で長く、大都市に隣接しない地域で短い傾向が見られた。
 一方、自動車携帯電話については、PHSのような新規サービスの開始、端末の高機能化と低廉化と大きな環境変化があった。平成5年度の加入数増加率も24.5%と高かったが、平成6年度は103.2%と驚異的な伸びを示した。増加率が100%を超えた都道府県は28に及ぶ。

2 平成6年度国際電気通信トラヒックの現状
 2章では、平成6年度における国際電話のトラヒックデータの整理を行い、その特徴を分析した。
 国際通信トラヒックは1980年代後半から現在に至るまで急激に増加してきており、平成6年度には発信と着信を合わせて5.9億回に達している。
 発信と着信別の通信回数・通信分数については、発信が着信を上回る傾向が続いているが、平成5年度からは着信の増加率が発信の増加率を上回っている。
 対地別のシェアを見てみると、発着信合計分数では、米国が1位で28.6%と圧倒的なシェアを占めている。発信と着信別に見てみると、共に米国が1位で、発信では中国が2位で韓国が3位、着信では韓国が2位で中国が3位となっている。

3 通話構造変動要因の検討
 3章では、過去5〜7年間の電気通信トラヒックの都道府県交流データを用い、この期間の電気通信トラヒックの構造変化について検討した。
 通話構造の変化は、加入者増加による効果、電話の利用頻度変化による効果、各県どうしの結び付きの相対的順位の変化による効果の三つの観点から分析した。
 加入者数については、絶対数ではなく、増加率で評価した。検定の結果、毎年増加率は異なるといえるものの、分散については異なるとはいい切れない。また、増加率の分散は近年縮小しており、これをうけて過年度においては分散が等しいとの仮説が成り立つ可能性が高かったのが、近年棄却されやすくなってきている。
 加入あたりの通話量についても、平均値については各年度間で等しいとはいえないものの、分散については等分散の仮説を棄却し切れていない。この結論は加入数についてのものと類似している。
 加入者の影響を除いた指数で見た各都道府県の結び付きは、全体としては平成2年度から3年度まで増加し、その後平成5年度まで減少してきていたが、平成6年度で再び増加している。Wilcoxonの符号順位検定の結果からは、毎年度の分析に差がないとはいえないこととなっている。つまり、加入数の影響は控除されているにもかかわらず、平均的個人の水準で見た都道府県ごとの結び付きは安的的ではないことになる。