1996年6月:調―96―W―02

『身体障害者の雇用と情報通信システムの利用に関する調査研究報告書(平成7年度調査)』

                        情報通信システム研究室主任研究官 五十嵐邦雄
 身体障害者の雇用拡大と情報通信システムの活用の有効性を調査することを目的に、雇用する側の企業と雇用される側の身体障害者等に対して、アンケート調査(身体障害者自身からの回答はパソコン通信によるアンケート調査から得た。)及びヒアリング調査、同様の課題に関する海外の状況について、若干の文献調査を試みた。
     調査結果について、主なものを挙げれば以下のとおりである。
  1. 身体障害者の雇用率は大企業ほど高い。
  2. パソコン通信アンケートに答えた身体障害者の8割が就業しており、同じく回答した重度の身体障害者の約8割が就業している。
  3. 企業における身体障害者の配属先は「人事、経理、総務」の共通部門が多く、職種では「一般事務」、「製造・検査・生産管理」が多い。
  4. 身体障害者を雇用する際の問題としては、「通勤、移動の問題」、「他者とのコミュニケーションがうまくいかない」を挙げる企業が多かった。
  5. 就業時において、重度の身体障害者の情報通信機器の利用割合が最も大きい。
  6. 大企業に雇用されている身体障害者ほど、ワープロ、パソコン、ネットワークシステムの利用割合が大きい。
  7. 身体障害者が業務を行う上での有用性という点で、パソコン通信等に対する期待は大きい。
  8. 企業のOA化と身体障害者の雇用率との間には、強い相関関係がある。
  9. 身体障害者が情報通信システムを利用して就業する際の課題としては、コスト、機器開発、インフラの整備のほか、情報通信リテラシーの向上及び社会・企業の理解がある。
  10. 情報通信システムの利用により、身体障害者とのコミュニケーションが円滑になった。
  11. 企業は、身体障害者の在宅勤務及びサテライトオフィスに対して、トレンドとしては認められながらも、個別具体的には消極的であった。
  12. テレコミューティングが最も進んでいると考えられる米国においても、制度として正式に認められているのはわずかであり、また、正社員であってある程度就労経験がある者がテレコミューティングに移行する例が多く、新規募集は少ない。
  13. 身体障害者のフルタイムの在宅勤務は一種のゲットーを作ってしまうという指摘がある。