1996年6月:調―96―W―03

『教育分野における情報通信アプリケーションの利用実態等に関する調査研究報告書』

                        情報通信システム研究室主任研究官 五十嵐邦雄
                                     研究官 國井 昭男
 現在、教育分野では様々な情報通信アプリケーションが導入されている。それらは、「教育支援」「コンピュータ教材」「遠隔教育」「ネットワーク化」という四つのカテゴリーに分類することができる。「教育支援」とは、オンラインによる受講の申込受付や電子メールによる学校と家庭との事務連絡など、教育周辺の効率化を情報通信アプリケーションによって実現しようとするものである。「コンピュータ教材」としては、CAI(Computer Assisted Instruction)システムのような自習システムが挙げられる。社会教育や企業内教育分野においても自習システムの利用は盛んである。しかし、学校教育の分野では、生徒が表現や創造の手段としてパソコンを利用することが多くなっており、今後はこのような利用が中心になってくると考えられる。「遠隔教育」には、対面での授業をテレビ会議システムなどで行うものと、従来の通信教育が郵便で行っていた添削課題や指導のやりとりをファクシミリやパソコン通信などに置き換えるものの二つがある。このようなアプリケーションは、学校教育分野への導入はほとんど見られないが、企業内教育や社会教育の分野ではある程度普及している。「ネットワーク化」には、教室・学校内部のみでコンピュータを接続する形式や姉妹校など学校同士のコンピュータを接続する形式などがあるが、最近ではインターネットへの接続が大きなトレンドとなっている。
 「コンピュータ教材」「遠隔教育」「ネットワーク化」の三つのアプリケーションについて、導入状況や利用ニーズ、問題点、将来展望などを把握するために、アプリケーションの導入者サイドである学校や専門学校などの社会教育機関、企業と利用者サイドである学生や社会人に対してアンケート調査を行った。その結果、利用者サイドの各アプリケーションに対する利用ニーズはおしなべて高いものの、各アプリケーションそれぞれに導入を阻む要因が存在することが明らかになった。
 教育分野において上記の情報通信アプリケーションが本格的に普及していくには、それぞれのアプリケーションに固有の問題点が解決される必要がある。「コンピュータ教材」の普及のためには、よりよいコンテンツの教材ができるだけ安価に提供される必要がある。また、学生・生徒が自由にパソコンを使えるような環境も不可欠だが、そのためには、国や企業、地域社会などからの何らかの支援が必要であろう。「ネットワーク化」が進展するためには、学校が安価に高速の専用回線を利用できるような環境が必要である。そのために、専用回線にも「アカデミープライス」のような料金体系が設定されることが望まれている。「遠隔教育」の普及のためには、テレビ会議システムのような大がかりなシステムだけでなく、パソコン通信やインターネット、ファクシミリなど一定の普及が見られるメディアの利用も検討される必要がある。
 教育分野においては、新しい教育形態の創造を可能にする「ネットワーク化」が今後ますます重要になると思われる。郵政省は、教育分野における情報通信アプリケーションのさらなる普及のために、ネットワークの普及や利活用を推進する施策に注力していく必要があるのではないだろうか。