郵政研究所研究調査報告書



                                       1997年7月:調-97-VI-03

『デジタル技術の進展に伴う放送ソフト制作の将来動向に関する調査研究報告書』

                        通信経済研究部主任研究官  神野 克彦
                                 研究官  外薗 博文
 最近の多メディア・多チャンネル化の進展に伴って、放送ソフトに対する需要が増大するとともに、放送ソフト制作コストの低減が求められている。一方、メディアやチャンネルの多様化は、マーケットの横断化を進め、放送ソフトの多段階使用による効率化と需要創造の相乗効果により、ソフト自体の収益力も向上させることが期待されているところである。

 ところで、昨今のデジタル技術の進展により、放送分野においても従来の技術や方法では不可能であった高度な放送ソフトの制作や編集、さらには送出などの過程における迅速化・効率化が期待されている。放送局やプロダクションのデジタル化は、ほとんどの事業者の方針がデジタル化の方向にあることや、現在、生産されている放送関連機器のほとんどがデジタル機器であることから、将来的には着実に進展していくものと考えられる。しかし、デジタル化が着実に進展しているコンピュータや通信の世界に比べ、放送分野においては一部のシステムを除いて未だアナログ方式が主流となっており、抜本的なデジタル化はこれからという状況にある。

 本調査研究は、放送を取巻く環境が急激に変化する中で、高度化・多様化する放送ソフトへの人々のニーズに適切に対応していくために、デジタル技術を活用した放送ソフト制作環境の在り方を明らかにしようとするものである。

 具体的には、まず、放送局やプロダクション等におけるデジタル化の現状を事例分析や要因分析を交えながら明らかにするとともに、デジタル化で期待される高品質化や効率化等の効果を整理している。

 さらに、以上のデジタル化の現状や効果を踏まえた上で、デジタル化を推進していく際の課題を整理し、デジタル化の効果を活用した放送ソフト制作環境の方向性や在り方を検討している。そして、最後に望ましい放送ソフト制作環境を実現していくための課題の検討を行っている。