郵政研究所研究調査報告書



                                       1997年8月:調-97-VI-07

『成長するアジアの電気通信と日本のあり方に関する調査研究報告書』

                        通信経済研究部主任研究官  神野 克彦
                                 研究官  石田 隆章
                                 研究官  東海林義朋
 本調査研究は、平成8年度「アジアの電気通信と日本の貢献」調査研究会の成果を取りまとめたものである。

 経済のグローバル化や高齢化の進展など、日本の経済・社会環境は21世紀に向けて大きく変化しており、これにともない電気通信産業が変革を迫られている。一方、アジア地域は、80年代以降世界の成長センターとして飛躍的な経済成長を遂げてきたが、成長速度に比べて各種のインフラの整備が遅れており、これが21世紀へ向けての持続的な成長の阻害要因となることが懸念されている。アジアでは、電気通信部門においても膨大なインフラ整備ならびにサービスの拡充が求められている。特に、都市部における積滞の発生、インフラ整備の都市部への集中による地域間格差の拡大などの問題も顕在化しており、これらの問題を解消する観点からも、資本や技術の提供、人材育成などの多くの面で先進国の協力が求められている。

 このようななか、日本の電気通信産業は、国内的には日本の経済・社会環境の変化に合わせたサービスの提供へと変革を迫られる一方、アジア地域においては新市場開拓の観点だけでなく、各国の電気通信部門における問題の解消を図り、持続的な経済成長の基盤構築に寄与するという国際協力の観点からも多面的に貢献していくことが望まれている。  こうした状況を踏まえ、本調査では、アジアの電気通信市場の今後の成長性を探るとともに、共通の課題を抱えるパートナーとして、わが国の電気通信産業のアジアへの国際協力のあり方について検討を行った。第T部「アジアの電気通信の現状」において現状を分析した後、第U部「アジアの電気通信の将来展望と課題」においてアジアが抱える課題を把握し、第V部「わが国の電気通信分野での対アジア協力の今後の方向性」において、課題解決に向けたわが国の官民の対アジア協力の方向性について展望した。