郵政研究所研究調査報告書



                                       1997年7月:調-97-IV-01

『コミュニケーションメディアの代替性に関する調査研究報告書』

                    情報通信システム研究室主任研究官  井手  修
                                 研究官  井川 正紀
 本調査研究は、既存のコミュニケーションメディアが、新しいコミュニケーションメディアに代替されるメカニズムを把握するためのパイロット的な調査として、機能面に焦点をあてたコミュニケーションメディアの代替要素の考察を中心に、コミュニケーションメディア代替性のマクロ的な分析を試みたものである。

 本調査研究でいう「代替」とは、コミュニケーションメディアが物理的に置き変わることではなく、利用機会(回数)の一部または全部が置き変わることと定義した。

 さらに、調査研究範囲を、「パーソナル・コミュニケーション」に絞り、六つのメディア(電話、FAX、携帯電話・PHS、電子メール、携帯型パソコンやPDAといったモバイル端末による電子メール、DTC)について調査を行った。また、情報を「発信」する際に、目的を「ビジネス」及び「プライベート」に分け両者の比較も試みた。調査対象とする代替要素は調査時点の技術を前提とし、同報性、対話性、随時性、親展性、随所性、視覚性、操作性、経済性、広範性とした。

 調査は、「メディア利用の先駆者」と考えられるパソコン通信の会員にアンケートを行い、得られたメディアの利用回数から各メディアごとの代替度を算出し、それぞれのメディア選択時の魅力、不満要素と合わせて代替時にキーとなる要素を推測した。また、アンケートをもとに、電子メールが100%普及した世界を想定し、その世界でのメディアの利用形態を試算してみた。

 その結果、次の結果が得られた。

1 新しいメディアが登場すれば、旧メディアで行われていたコミュニケーションの一部が新しいメディアに代替される。加えて、新しいメディアは、それまで潜在していたコミュニケーションに対するニーズを顕在化させる効果をもっている。

2 メディア代替要素については関心の高低にばらつきが見られ、機能に限定すれば対話性が最も高く、次いで随時性、随所性となっている。親展性への関心が最も低い。不満では随所性が特に高い。ここ数年、モバイル系メディアの需要が高まっているが、どのメディアについても外出先で使いたいという要望が見られることから、今後も携帯・PHS、PDAの普及率の高まりが期待できる。また、モバイル系メディアの代替は、プライベートの場合が顕著である。基本的に、ビジネスよりプライベートの方が外出先からのコミュニケーション機会の比率が高い傾向が見られた。

3 機能以外の要素への関心は、広範性と経済性が高い。これらの魅力、不満は普及の進み具合いとの相関が極めて高いため、一般に普及途上の新しいメディアほど不満が強く現われる傾向が見られる。

4 今後のメディアに関しては、国際化時代を反映し、随所性と随時性、言い換えるとモバイル性と蓄積性の重要性がますます高まるであろう。