調査研究報告書


1998年 7月:調−98−Y−02

『定量的方法による通話トラヒックの特性分析に関する研究調査報告書』

通信経済研究部主任研究官 宮田 拓司
         研究官 高谷 徹

 自動車携帯電話、PHSの目覚ましい普及により、最も基本的な通信サービスである電話サービスも多様化が進んできている。本研究では、電気通信事業報告規則に基づく平成8年度のトラヒックデータを活用し、3つのテーマについて分析を行っている。

 一点目は国内通話についての分析である。国内通話の分析については特に都道府県別のトラヒックデータを中心に用い、普及状況、利用状況、交流状況について整理している。まず加入電話については、加入数の増加率が0.7%と極めて低い値に留まった。通話回数の増加率は4.2%と増加しているが、通話時間は-0.7%と前年に引き続き減少した。平均通話時間は全国的に減少している。また同一県内終始率は78.7%、同一MA内終始率も59.7%と低下傾向が続いている。自動車携帯電話サービスについては、全国加入数の増加率は104.6%であり、前年度より伸びが鈍化した。通話交流についてみると、県内通話終始率が79.0%と加入電話を上回った。PHSは今回初めて通年のデータが得られ、加入数は前年度末と比較して299.8%と急増した。通話回数、通話時間についても、10倍弱になった。また県内通話終始率は前年度より減少したものの82.0%と高く、近距離通話が主体になっている。

 二点目は国際通話に関するもので、発信着信別の通話量の推移、通話トラヒックの対地別構成等について基礎的な整理を行っている。国際通信トラヒックは急激に増加してきており、発信と着信を合わせて7.6億回に達している。通信回数と通信分数の増加率は10%近い伸びが続いている。発信と着信別の通信回数・通信分数については、発信が着信を上回る傾向が続いているが、今年度は発着信分数差が1.9憶分まで減少した。発信分数におけるKDDと国際NCCのシェアの推移を見ると、国際NCCのシェアが拡大を続けており36.1%となった。対地別のシェアを見てみると、発着信合計分数では米国が1位で32.5%と圧倒的なシェアを占め、以下中国、韓国、フィリピン、台湾と続いている。

 三点目は、上記に関連して平成8年度のトラヒックデータを用い都道府県別、都道府県間の通話トラヒックの需要分析を行った。ここでは四段階推定法と整合的な手法によって通話需要を分析するモデルを構築した。昨年度モデルとの最も大きな違いは、通話量の計量単位を時間から回数に変更したことである。まず最初に、都道府県通話OD表(Origin Destination Table)の対称性について検討した。次に発信着信通話量モデルとして、重回帰分析を行い、地域間通話量モデルとしては、二重制約モデルによって分析を行った。最後に Qアナリシスによって地域間通話構造を分析した。電話の種類を問わず、東京は全国的な影響力を有し、大阪は近畿・中国・四国に拠点性を有することがわかった。電話の種類別に東京の拠点性の強さをみると、ISDNが最も強く次に加入電話が強い。公衆電話、自動車携帯電話、PHSではそれほど強くないことがわかった。