調査研究報告書


1998年 7月:調−98−Y−03

『地域におけるインターネットの活用に関する研究調査報告書』

通信経済研究部主任研究官 宮沢 浩
         研究官 高谷 徹
情報通信システム研究室研究官 美濃谷 晋一
          元研究官 姫野 桂一

1.調査研究の目的と背景
地域におけるインターネット・イントラネット活用に関する現状分析・先進事例分析により、地域における有効なインターネット活用のモデルと実現のために求められる事業の進め方について提言することを目的とした。

2.地域におけるインターネット活用の可能性
インターネットは利用の拡大とサービスの低価格化と全国展開が進んでいる。また、地方公共団体に対してはワンストップサービスや開かれた行政に対する期待が高まっているが、地方財政は厳しさを増しており、これらのニーズに最小のコストで対応していく必要がある。インターネットの普及率は現状低いが、今後の普及を考えた場合、取り組みを始めるのに早すぎることはないと言える。

3.地方公共団体におけるインターネット活用の現状
都道府県、及びWebサイト開設市町村等に対し、WWWによる情報発信に関する設問を中心にアンケート調査を行った。その結果、地方公共団体によるインターネット活用の現状について、インターネットの利用形態が限られていること、地域にメリットがある活用が不足していること、地域内の連携プロセスが不足していること、地方公共団体が関与しているISP事業にはインフラとしての位置付けの明確化が必要なこと、人口規模別に大きく条件が異なることが明らかになった。

4.地域におけるインターネット活用事例
インターネットを既に活用している都道府県、市町村、自治会を対象として、ヒアリング調査を行った。その結果、地域におけるインターネット・イントラネットの活用について、地域の多くの主体の取り込が必要であること、活用を進めるには多様な発展経路が存在していること、公平性を重視した事業では限界があること、「工夫」によってコスト・人的負担が軽減できる余地があること、実現には研修制度・人的支援が不可欠であること、現状ではサービス向上のために必要となる利用者からのフィードバックシステムが不十分であることが明らかになった。

5.地域イントラネットの実現へ向けて
今後地域でインターネット活用を進めていくためには、「地域イントラネット」としての取り組みが必要である。インターネットのインフラ整備においては、生じている情報格差の課題を明確にし、ボトルネックを見極めた上で効果的な支援策を講じる必要がある。また、人材の育成が地域全体の課題である。

 最後に、インターネット活用に関する事業の進め方については、事前評価に加えて事後評価を重視する必要があること、「横並び」ではない事業展開が効果的なこと、隣接地域、地域住民と歩調を合わせた事業展開が有効であること、「時間」を視野に入れた事業展開が不可欠であること、より日常的な業務への展開が重要であることがわかった。