調査研究報告書


1998年 7月:調−98−Y−04

『第10回郵政研究所国際コンファレンス「変貌する情報通信と電子経済時代の到来−加速する国際化と統合化」報告書』

通信経済研究部

平成9年12月4日(木)に実施した第10回国際コンファレンス「変貌する情報通信と電子経済時代の到来 −加速する国際化と統合化−」の模様を取りまとめた。

発表者発表概要
【基調講演】
ローレンス・J・ホワイト(Lawrence J. White)/ニューヨーク大学教授 「米国電話市場の規制緩和:学ぶべき点、避けるべき点」米国電話市場についての今後の課題は市内市場の独占状況の改善である。
五十嵐 三津雄/郵政事務次官「日本の第二次情報通信改革の展望」改革の柱は、@情報通信産業のダイナミズムの創出、A放送分野における競争促進、B新しい情報通信基盤の整備、の3点である。
【専門家報告】
報告者:ニコラス・エコノミデス(Nicholas Economides)/ニューヨーク大学教授討論者:堀 元/東北大学経済学部教授 「1996年電気通信法のインパクト」アンバンドル(要素分割)方式の導入により地域通信市場における競争が期待できる。
報告者:林 敏彦/大阪大学大学院教授討論者:金本 良嗣/東京大学経済学部教授「日本の電気通信産業:事業競争と規制の国際的競演」競争促進と技術の進化に適応した規制方針への変革が重要。競争の時代には事後的規制を基本とすることが必要。
【パネルディスカッション】
[パネリスト]高田 昭義/郵政大臣官房総括専門調査官トーマス・A・ピューゲル(Thomas A. Pugel)/ニューヨーク大学スターンスクール副学長佐藤 隆三/ニューヨーク大学教授ローレンス・J・ホワイト(Lawrence J. White)/ニューヨーク大学教授李 天杓(Chon Pyo Lee)/ソウル国立大学教授、韓国通信開発研究院所長シェン・ハンヤオ(Shen Hanyao)/東中国工科大学経営学部教授、上海経済開発院理事長月尾 嘉男/東京大学工学部教授[コーディネーター]佐藤 隆三/ニューヨーク大学教授情報通信の新展開と社会経済システムの変貌「各国の電気通信政策の動向」(1)日本における情報通信の政策課題は第二次情報通信改革の推進、ネットワークインフラの整備、アプリケーションの開発、創造的研究開発の推進、グローバルな政策展開の5点である。(2)米国では一部公共政策の変更があるが電気通信分野の改革も金融部門へ与える影響は大きく、その影響は米国から世界に波及し、競争が加速される結果を生んだ。(3)韓国の電気通信はWTOにおける基本電気通信分野における妥結、ITAの締結によって抜本的な変遷を経験している。(4)中国の電気通信市場は1987年の改革と開放の政策が開始されて以来急速に拡大し、電話の普及率も上昇を続けている。「電気通信の高度化によるネットワーク化、電子化の経済的・社会的インパクト」(1)フィジカルスペースからサイバースペースへの移行が急速に進むことにより、規模の重要性は薄れ、速度が重要となる社会となる。(2)技術の進歩によって、通信が人間同士の直接のコンタクトを代替し、情報の流れを円滑かつスピーディにすることによって、社会全体の効率化を進めることができる。(3)サイバー社会の到来のために、情報のセキュリティ、雇用問題、情報格差の問題の解決に取り組む必要がある。(4)人間は主観的情報と、客観的情報とのバランスを判断して行動する。情報への信頼が大切であり、情報社会では重要な課題となる。