調査研究報告書


1998年 8月:調−98−W−02

『インターネットビジネスの現状と利用動向に関する調査研究報告書』

情報通信システム研究室 研究官  井川 正紀
            研究官  美濃谷 晋一

 インターネットビジネスの中でも特にインターネットを利用したオンラインショッピングに焦点を絞り、ビジネスの実態、ユーザの利用動向、カタログ販売などの既存の通信販売ビジネスとの相違などを調査分析し、通信販売におけるオンラインショッピングの位置付けとその将来像を明確にすることを目的とした。

 通信販売の1つの販売チャネルとしてインターネットが注目されてきているが、通信販売企業にはノウハウが少なく、未だ実験の段階にある企業が多いと考えられる。オンラインショッピングには、地理的制約がない、経済的である、リアルタイム性が高いなどの利点がある一方で、決済方法が未統一、セキュリティに不安、インターネット利用者に偏りがあるなどの課題が指摘されている。

 本調査研究では、大仮説「オンラインショッピングは当面一部コアなユーザ中心の市場として推移する」を設定し、アンケート調査および企業ヒアリングにより検証するために、ユーザ側、企業側、業界全体のそれぞれの切り口で、大仮説をより具体化・細分化した小仮説を設定した。

 アンケート調査では、コンピュータリテラシーが必ずしも高くない一般ユーザとオンラインショッピングに対する認識が高い先進ユーザを対象に、既存の通信販売やオンラインショッピングに対する認識、購買行動、利用意向などの設問を中心に調査を行った。その結果、既存の通信販売については、一般ユーザと先進ユーザには大きな差異はなかったが、オンラインショッピングについては、購入商品、購買行動、不満点、不安点などで、それぞれ特徴があることが明らかになった。

 企業ヒアリングでは、サイバーモール運営企業と通信販売企業を対象に、集客方法、出店店舗へのアプローチ方法などを中心に調査を行った。その結果、イベント、クイズ、電子メール活用など、サイバーモールやインターネットの特性を活かした利用拡大への取組みや、商品価格の設定方法、店舗の出店方法などの出店店舗育成の考え方、通信販売業界におけるオンラインショッピングの考え方などが明らかになった。

 オンラインショッピング市場は先進ユーザの特性を反映してニッチ市場的な性格の強いものとなっている。この市場は、一般ユーザの利用意向が低いことや、余暇が増加してもショッピング費用は変わらないことを考えると、当面大きな市場にならないといえる。このような仮説検証結果から、オンラインショッピングは一部コアなユーザによるマーケットで生き残り、既存の通信販売と棲み分けると結論付けられ、大仮説は肯定された。

 オンラインショッピングが普及するためには、一般ユーザのコンピュータリテラシーの向上、インターネットの特性を活かした企業側の取組み、オンラインショッピングに適した商品の品揃えなどが必要となる。また、パソコンをはじめとする情報機器の操作性の向上、低価格化、通信料金の引下げなど、家庭の情報通信インフラ環境を充実させることが大前提となる。