調査研究報告書


1998年 8月:調−98−W−03

『企業情報ネットワークに関する調査研究報告書』

情報通信システム研究室 研究官  西垣 昌彦
            研究官  井川 正紀

 本調査研究は、グループウェアに焦点を当て、それらの企業への導入状況を把握し、導入目的達成企業の特徴の抽出、組織文化、ワークスタイルに対する影響を明らかにすることを目的とする。そのため、本調査研究では企業情報ネットワーク導入側と、利用者側双方にアンケート調査を行い、分析を行った。その結果、以下のことが解った。

1.導入者側と利用者側の意識の相違
企業情報ネットワーク導入の成果の分析より、導入者は業務全体に関する部分について高い評価を示し、利用者は個々の仕事に関わる部分について高い評価を示している。また、わずかながら利用者側には企業情報ネットワークに対してネガティブな評価を下している場合も見られる。導入者側はそのような利用者側のネガティブな面は捉えにくい部分であると考えられる。 企業情報ネットワークを導入する場合はそれらの意識の相違があることを理解し、導入者側から利用者側への一方的な押し付けにならないようにし、本当に利用者にとって必要なことは何かを検討しつつ導入することが重要である。

2.企業情報ネットワークの導入に影響する欧米型経営スタイル
会社風土と企業情報ネットワークの導入の関係の分析では、欧米型の経営スタイルであると企業情報ネットワークの導入が進んでいるという結果が出た。単に「企業情報ネットワークを導入すれば成果が上がる」と考えると導入成果が上がらないように、何のために企業情報ネットワークを導入し、どういう範囲でそれを活用するかは大きなポイントである。

3.企業情報ネットワーク導入成否に影響するネットワーク化率
情報化が中途半端な場合は企業情報ネットワークのネガティブな面ばかりが強調される傾向にある。特にこの情報化で影響するのはネットワーク化率である。企業情報ネットワークは全員が参加していくことで効果があがるもので、情報インフラ未整備等のネットワークへの導入障壁が存在する場合には、企業情報ネットワークはほとんど機能せず、保守運用の問題点や教育の問題さらには不公平感がつのるといったネガティブな面が強調される傾向にある。まずは、こうした情報インフラの整備が重要と考えられる。

4.テクノストレスとネット中毒予備群
情報化の進展によってメンタルな面での悪影響が懸念されているが、今回の調査ではテクノストレス症候群と判断される人が約1割いた反面、16%程度のネット中毒予備群、すなわち「いつもパソコンに向かっていないと安心できない」という人が検出された。