調査研究報告書


1998年 8月:調−98−W−04

『身体障害者、高齢者に優しい情報通信の在り方に関する調査研究報告書』

情報通信システム研究室 研究官  西垣 昌彦
            研究官  美濃谷 晋一

 高度情報通信社会では、ネットワークにより各種の取引や行政手続が行われるようになるなど、情報通信の重要性が一層高まることから、障害者・高齢者をはじめ、誰もが情報通信の利便を享受できるような環境を整備していくことが重要である。そのためには、障害者・高齢者の情報通信の利用動向やニーズ、利用のネックとなっている点を把握した上で、必要な関係施策を講じていくことが必要である。

障害者・高齢者に対するアンケート調査の結果、以下の事項等が明らかになった。
1)基本的な通信手段である固定電話(加入電話)は、留守番電話、コードレス、音量調節、ワンタッチダイヤル等の付加機能を活用して、幅広く利用されているが、視覚障害者、高齢者は多機能化に伴う操作の複雑化が煩わしいと感じる一方、聴覚障害者、音声・言語障害者は障害補完のための付加機能が不十分と感じている。その他の通信機器についても、多機能化による操作の複雑化、小型化による見にくさ・操作のしにくさに対する不満が強く、また、全体的に料金面での不満度が大きい。

2)ほとんどの障害者は解説放送・字幕放送・手話放送を知っているが、高齢者の認知は半分強にとどまっている。また、無料の電話番号案内サービスは対象である視覚障害者にはよく知られているが、肢体不自由者の認知度は低い。

3)パソコンやワープロを利用している人は、障害者の4割弱、高齢者の1割強であるが、パソコン通信・インターネットの利用率は、障害者の1割、高齢者の1%にとどまっている。利用している人は、情報入手手段や他人との交流手段として活用しているが、操作が複雑なことや料金面での不満が大きい。

障害者・高齢者のための情報通信システム・サービスの先進事例調査の結果、以下の事項等が明らかになった。
1)音声誘導システムに関しては、視覚障害者の自立性の向上などの効果があるが、一方実用化するには携帯する機器の重さやシステムの精度などが課題となっている。

2)コミュニケーション支援システムに関しては、テレビ電話を活用しているものがあるが、利用頻度が少なく、導入に難色を示している企業が多いことが課題となっている。

3)パソコンサポートに関しては、障害者・高齢者をサポートする組織や、自宅や郵便局など安心して学習できる場所が求められている。

このような調査結果を踏まえ、分かりやすく使いやすい機器・サービスの開発・提供、有用な機器・サービスの認知度の向上、競争の進展による料金の一層の低廉化の推進、セキュリティ意識の向上を含めた情報リテラシーの涵養とそのための人的サポート体制の確立といった諸施策を講じるとともに、ネットワークの利用が困難な人等のために代替手段を講じておくことが重要である。