郵政研究所月報

2000.11


調査研究論文

家計の総合口座選択と金融機関の利便性に関する実証分析


前第二経営経済研究部

奥井めぐみ

[要約]

 家計が金融機関に口座を持つ場合、決済のための口座(普通口座)と貯蓄目的の口座を別々に持つことが一般的である。その際、決済目的口座と貯蓄目的口座が同じ金融機関にあれば、1つの金融機関にアクセスするだけで決済と貯蓄の両方の手続きを済ますことができるので、同じ金融機関に目的別の口座を持つのが望ましいと予想される。

 本研究では、家計レベルの個票データを利用し、家計が決済目的にも貯蓄目的にも主だって利用している金融機関が同じであるか、あるいは決済目的と貯蓄目的の目的別に異なる金融機関を利用しているのかについて、特に利便性が大きな影響を与えているのかに着目し、実証的に分析することを目的としている。分析に利用したのは、郵政研究所が委託して行うアンケート調査「金融機関利用に関する意識調査(平成11年度)」である。

 本研究において、最も預貯金額(投資額)の多い金融機関、すなわち貯蓄目的主要金融機関と、決済口座としての利用金額が最も多い金融機関、すなわち決済目的主要金融機関とが同じである場合、その家計は「総合口座を利用している」と表現することとした。

 推計結果より、1)総合口座を利用する家計は、金融機関の選択理由として利便性を重視する傾向がある、2)総合口座選択確率の推計結果より、貯蓄総額が低いほど、また勤務先から最も近い金融機関を決済目的主要金融機関としている家計ほど、総合口座を利用する、3)利用金融機関に対して収益性を求める家計は、総合口座を利用する確率が低くなることが示された。

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