郵政研究所月報

2000.12


調査研究論文

『金融機関利用に関する意識調査』に見る金融機関の利用動向

―家族構成の変化が与える影響について―


第二経営経済研究部研究官

前第二経営経済研究部リサーチ・アソシエート

櫻井 正道

奥井めぐみ

[要約]

1 郵政研究所では、平成11年11月から12月にかけて、全国4,500世帯を対象とする「金融機関利用に関する意識調査」を実施した。この調査は、金融自由化など日本経済の構造変化が進展する中で金融機関・金融サービスに対する家計の意識を調査するもので、平成元年から2年毎に実施している。本論文では、第1章、第2章で調査結果の概要について報告し、第3章では本件データを用いて、少子高齢化の進展による家族構成の変化が、家計の金融機関選択理由にどのような影響を与えるか、プロビット・モデルによる分析を行う。

2 前段のアンケート調査の結果、ATM・CDがあったらいいと思う場所として、コンビニエンスストア、スーパー、ディスカウントストアへの希望が多いこと、金融機関店舗以外での場所で利用したい取引手段としては、パソコン(インターネット)に加え、携帯電話が台頭していること、等が明らかとなった。

3 第3章における主な分析結果は、以下のとおりである。

  世帯主年齢20―59歳の常勤労働者世帯では、世帯主年齢が高いほど利便性の選択確率は上がり、収益性や安全性の選択確率が下がる。

  世帯主年齢20―59歳と世帯主年齢60―69歳の両方で、貯蓄総額が高いほど収益性と安全性の選択確率が上昇する。

  世帯主年齢20―59歳の常勤労働者世帯では、年収が高いと安全性の選択確率が高くなる。

  世帯主年齢20―59歳において、平成11年は他の年に比べ安全性の選択確率が高くなる。

  で示した年齢の影響には、年特有のショックによる影響やコーホートの効果がほとんど含まれておらず、純粋な加齢の影響を表している。

4 以上の結果から、世帯主年齢が高くなるほど利便性が重視され、若年層は収益性や安全性を重視していると言える。また、貯蓄総額の多い家計では収益性や安全性が重視されるため、今後、少子化が進むことにより遺産を残す必要性が小さくなり、貯蓄総額が減った場合には、収益性や安全性は金融機関の選択理由として重視されなくなることが予想される。当該分析は、金融機関が今後、高齢化、核家族化に伴い、顧客セグメント別の商品設計、チャネル戦略において、何をセールスポイントとしていくべきかについて、示唆を与えるものとなっている

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