ディスカッションペーパー・シリーズ 2000-06

 

金融機関の相対的利便性と家計の金融機関選択:

「金融機関利用に関する意識調査(平成11年度)」より

 

郵政研究所第二経営経済研究部リサーチ・アソシエート

奥井 めぐみ

 

2000.7.17

 

 

<要約>

1 金融自由化により、異なる業態の金融機関が同一の商品を扱うことが可能となった。それに伴い、各金融機関を特徴づける金融商品といったものが消えつつある。各金融機関での取り扱い商品に差がなくなると、家計が金融機関を選択する際には、利便性がより重視されることが予想される。そこで、本研究では、家計が金融機関を選択する際に、利便性はどれほど重要な決定要因となるのか、また金融機関によって、家計がその金融機関を選択する際に重視する要因は異なるのかに着目した研究を行う。

2 具体的には、プロビットモデルにより、都銀、地銀、信金・信組、郵便局の4つの金融機関について、家計がこれらの金融機関を決済目的主要金融機関や貯蓄目的主要金融機関として選択する場合に、利便性がどのような影響を与えるかを分析した。利用したのは、1999年に行われた「金融機関利用に関する意識調査」の家計レベルの個票データである。このデータの大きな特徴は、各家計にとっての金融機関の相対的な近さを知ることができる点である。そのため、集計値では得られなかった家計レベルでの利便性についての情報を得ることができる。

3 主な結果は以下の通りである。1)家計にとって、自宅や勤務先から相対的に最も近い金融機関は、決済目的主要金融機関としても貯蓄目的主要金融機関としても選択される確率が高くなる。2)各金融機関の選択確率は、自宅からの利便性を重視するか、勤務先からの利便性を重視するかによって異なる。

4 加えて、貯蓄目的主要金融機関への預貯金比率にどのような要因が影響を与えるかについての分析も行った。その結果、年齢が高くなるほど、貯蓄は分散される傾向があること、勤務先からの利便性を重視する家計では貯蓄額が集中する傾向にあることが示された。また、1995年に比べると、1999年では貯蓄総額の高い家計が貯蓄額を集中する傾向が見られなくなった。さらに、決済目的主要金融機関と貯蓄目的主要金融機関として同じ金融機関を選択するか否かにどのような要因が影響を与えるかについて分析した結果からも、利便性が与える影響が顕著に観察された。


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